矢野経済研究所は、国内のコールセンター事業者のAIサービスについて調査を実施し、市場規模および市場動向に関して明らかにした。
調査結果概要
同調査におけるコールセンター事業者が提供するAIサービスとは、AI技術を活用してテキストまたは音声で人と対話するサービスのことであり、同市場規模には、コールセンター事業者が顧客企業のコールセンター向けに提供するAIチャットボットなどの売上高に加え、サービス導入後のチューニングなどの運用業務の売上高も含んでいる。
大手を中心に、コールセンター事業者は、自社が保有しているコールセンター施設にAIサービスを導入するだけでなく、クライアントのコールセンターに対してもAIサービスを提供している。
2018年頃から、コールセンターにおけるAIサービスの実導入が進み始めた。2019年度は人材不足が深刻化したことにより、オペレーター業務の自動化ニーズが高まった。そのためコールセンター事業者が提供するAIサービスを導入する企業が増加し、2019年度のコールセンター事業者が提供するAIサービス市場規模は、事業者売上高ベースで1,800百万円に達した。
2020年度は新型コロナウイルスの感染対策としてオペレーターの稼働人数を減らして密を避ける必要が出てきたため、オペレーター業務の自動化ニーズはさらに高まった。それにより、2020年度の同市場規模は、前年度比163.9%の2,950百万円となった。
注目トピック
2021年度のコールセンター事業者が提供するAIサービス市場規模は前年度比139.0%と拡大する見込み
2021年度に入ってからも新型コロナウイルス感染拡大対策を背景としたオペレーター業務の自動化ニーズは継続している。また、在宅勤務が一般的となり、エンドユーザーとの接点がウェブやソーシャルメディアなどの非接触チャネルになるケースが増加しているため、それらと親和性が高いAIサービスを導入する企業は増加傾向にある。そのようなことから、2021年度のコールセンター事業者が提供するAIサービスの市場規模は、前年度比139.0%の4,100百万円になると見込む。
2022年度以降も、オペレーター業務の自動化ニーズや非接触チャネルへの対応ニーズを背景に、AIサービスの導入は増加していくと予測。また、コールセンターへのAIサービスの導入事例が増えてきているため、これまで導入を躊躇してきた企業においても、AIサービスの導入は今後増加していくと予測する。
調査概要
- 調査期間:2021年7月~2022年3月
- 調査対象:コールセンターサービス提供事業者、IT系BPO事業者、印刷系BPO事業者、事務系ほかBPO事業者、コールセンター向けソリューション提供事業者
- 調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ウェブアンケート調査、ならびに文献調査併用