ホームページ作成ツール「Wix」、ECもレストラン予約も急成長
ノーコードのホームページ作成ツール「Wix」を提供するWix.com Ltdは、本社をイスラエルにかまえ、NASDAQに上場するグローバル企業である。「誰もがウェブサイトを制作、運営し、ビジネスを成長できるようになること」をミッションに2006年に設立、もっともライトなプランでは、無料でドラッグ&ドロップによりホームページが作成可能だ。2021年2月には、累計ユーザー数が2億人を突破したという規模である。
初心者が簡単にホームページを作成できる一方で、Wixの機能は豊富だ。カート、決済、注文管理といったECサイトに必要な機能のほか、スケジュールや通貨換算などの機能も兼ね備える。それらのうち必要な機能を組み合わせ、WIXストア、WIXフィットネス、WIXイベント、WIXレストラン、WIXホテル、WIXブッキングといったように業種別のサービスを提供している。
コロナ禍により、急激に進んだデジタル化。その変化の大きさを、積田さんは数字を交えてこう語る。
「本来5〜10年かかるようなデジタルトランスフォーメーションが、ここ1、2年という短い期間で迫られたと感じています。Wixのユーザー様は事業者、消費者両面で増加しました。
Eコマースサービスの「WIXストア」での売上拡大を見ると、2020年2〜5月までの4ヵ月、グローバルでは139%に成長しました。とくに成長が顕著な商品カテゴリは、「ギフト」(360%)、「食品&飲料」(296%)、「服&ファッション小物」(137%)です。日本の同時期は165%に成長し、1回目の緊急事態宣言の影響を受けたピーク日の2020年4月29日には、前年同期比1,707%という数値が出ました。日本における成長した商品カテゴリは、「ベビー&子ども用品」(923%)、「服&ファッション小物」(824%)、「食品&飲料」(451%)でした。私の個人的な経験からも、保育園が休園になってしまい、どう子どもに遊んでもらおうといったことを考えており、成長した商品カテゴリのものをよく購入していたので、とても納得がいきます。
飲食店向けサービスの「Wixレストラン」については、2020年は前年同期比で409%の成長、2021年の第1四半期では387%となりました。Wixが単に多機能なサービスを提供しているのではなく、その時の事業者様にとって必要な、飲食店様であればテイクアウトや席予約などのシステムがきちんとご提供できたからではないかと考えています」
たとえば、Wixのユーザーとして、石川県金沢市の近江市場の食材を販売する「イチバのハコ」がある。コロナ禍で既存の観光体験事業が壊滅的な打撃を受け、WixストアでECサイトを開設。「商品の背景にある生産者や流通者の想い」を伝えるため、単なるECサイトではなく、オウンドメディアとしても運営している。マーケティング機能を活用することで、商品の再購入率が4倍にもなったと言う。
「単純に機能をデジタル化するだけではなく、自分たちが何者か、なぜその事業を行っているのか、背景にある思いを伝えていかなくては生き残れないとおっしゃる事業者様が多数いらっしゃり、「イチバのハコ」様をご紹介すると、とても共感されます。消費者の方々も、生産者や事業者様の考えや想いを理解し、共感してから買いたいというふうに変わってきていますよね。その際に、型が決まったプラットフォームの活用は便利ではありますが、事業者様自ら場を作り、発信していく姿勢はとても重要だと思います」
InstagramなどSNSをはじめ、リアルが主体の事業者のデジタル活用も進んできてはいたが、一部に限定されていた。それがコロナ禍によりデジタル化が迫られたことで、消費者はデジタル経由で情報を収集しやすくなった。コロナ禍での変化をポジティブにとらえるとすれば、良い面と言えるかもしれない。とはいえ、本業があり、デジタルに不慣れな人たちがデジタル活用を継続するのはまだまだハードルが高い。ホームページ、SNS、メールマガジン、広告など、打ち手が増えればそれだけ管理画面が増えてしまう。
「ウェブサイトは作成したら終わりでなく、ビジネスを成長させたり、エンドユーザーの方に目的を達成していただくには、サイトを作った後が重要です。SEOやマーケティング機能、デザインなどのまた別の武器を使いこなすスキルが求められます。詳しい方たちは、それぞれを自ら選び取り、パズルのように組み合わせることができるでしょうが、不慣れな人たちには難しいですよね。Wixであれば、Wixの管理画面から広告出稿、Google Search ConsoleやGoogleマイビジネスへの設定などが行えます。Wix内でビジネスを加速させる武器を提供しているのが強みだと考えています」