「フロント業務」と「バックオフィス業務」 EC運営は双方の現状把握が大切
――新人EC店長が就任して最初に行うべき仕事を教えてください。
まずは、「現状把握」です。これはどの業種にも共通して言えることです。把握しなければならないことは大きく分けてふたつ。「フロント業務」と「バックオフィス業務」です。「EC運営」とひとことで言いますが、EC店長は運営全体をコントロールする立場ですので、それぞれの業務が現状どのように行われているのかを知る必要があります。
フロント業務とは、ECサイトの制作・更新業務やマーケティング・広告運用など、主に「販売」につながる仕事のことです。それに対して、バックオフィス業務は主に「販売後」に行う仕事を指します。注文された商品を滞りなく購入者に届けるための受注処理・会計・物流に加え、商品到着後のカスタマーサポートなども含まれます。
実は、EC店長という肩書きを持ちながらどちらの業務にも携わっている方は少数です。EC店長は売上を評価軸とされるケースが多いため、フロント業務には強いがバックオフィス業務はすべて現場や業務委託先に任せてしまっているということも少なくありません。たしかにEC店長の業務は多岐にわたるため、すべてをひとりで行うのは難しいでしょう。しかし、自身で手を動かさずともそれぞれの業務を把握し、双方が密接に関係していると理解することが大切です。
――双方の現状把握ができていないと、どのようなことが起こるのでしょうか?
たとえばキャンペーンを行った際に、トラブルが発生する可能性が高くなります。フロント業務だけに目を向けると、キャンペーンを実施すればアクセス数が増え、売上も上昇しますが、バックエンド業務と綿密に連携がされていない場合、在庫のコントロールミスが生じ、欠品が生じてしまいます。キャンペーンやセール時に限らず、「売れていたはずの商品が突然売れなくなり、原因を調べたら在庫切れだった」という経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか。
また、「ものが売れる」ということはバックオフィスの業務量も増大します。手動で行う作業は、ひとりあたりの1日の業務処理量に限界があるため、大量に受注が入る恐れがある際には事前共有が必須です。場合によってはキャンペーン時のみ人員を増やすといった調整が求められることもあるでしょう。「当日配送」を謳う店舗で社内のキャパシティーをオーバーして遅延が発生すれば、クレームにつながりかねません。これらは、バックエンド業務を疎かにするとフロント業務にも支障が出る典型的なパターンと言えます。
こうしたトラブルを防ぐには、業務の連携を行った上で、できるだけ人の手を介さず自動化できるものは自動化することが必要となります。代表的な例が「在庫管理」です。近年は、自社ECのほかに楽天市場やAmazonなどのモールに出店し、多店舗展開をするケースが増えていますが、在庫調整は手動で行っている方もまだいるでしょう。ここでリアルタイムに在庫連携できる管理システムを導入していれば、キャンペーン時にバックオフィス業務の作業量が増えすぎることもなく、ミスを未然に防ぐことが可能です。このように事故が起きにくい体制・仕組みを整備するには、販売した商品がどのようにエンドユーザーに届けられているかを理解することが欠かせません。
フロント業務とバックオフィス業務のつながりが理解できると、それぞれの業務にどの程度の人員が必要になるかも判断できるようになります。私は大まかに、購入単価が5,000円前後の場合、月商300万円まではひとりからふたり、~1,000万円で3から5人、~1億円で10人程度とお伝えしています。業務フローにもよりますが、ひとつの目安として適切な人材配置ができているか、いま一度確認しましょう。判断のポイントは、「誰かが休んでもほかの人がカバーできる業務量かどうか」です。