実店舗とECの関係性に変化 独自の価値・体験構築を追求せよ
コロナ禍で消費者の購買のデジタル化が進み、実店舗とECをシチュエーションに応じて使い分けるといった購買行動が、今後より進むことが予測される。こうした流れは、ビジネスや実店舗のありかたにも変化を及ぼし、今後は実店舗独自の価値や体験の提供にフォーカスを当てなくてはならないと伊藤さんは語る。
「従来型のビジネスは、実店舗をベースにECの売場を拡張する考えかたでオムニチャネルやOMOの設計を行っていましたが、今後はD2CのようにEC起点でビジネスを設計した上で実店舗の場作り、価値提供を考える必要があります。いつでもどこでも買い物ができる時代になればなるほど、その場に行く意味を生み出さなくてはなりません」
こうした流れの中で伊藤さんが注目しているのが、「RaaS(Retail as a Service)」だ。2020年8月に日本に上陸した「b8ta」をはじめとし、実店舗での販促の場提供を行うサービスがアメリカで盛り上がりを見せている。実店舗出店を行う際の多額な固定費を負担することなく区画を定額制で借りることができ、かつ接客人員やノウハウも併せて提供される仕組みで、出店者は売上と出店区画に訪れた顧客のデータを獲得することができる。
「2018年にMacyʼsも出資を行うなど、b8taの動きは新たな小売のありかたとして注目を集めています」
実店舗とECを行き来する顧客が増加するにともない、双方のシームレスな連携も求められる。売上や在庫の一元管理を容易に行うことができるツールとして注目を集めるのは、2020年9月にShopifyが発表した「Shopify POS」だ。
「ShopifyでECサイト構築を行う企業・ブランドは、ShoPify POSを用いることで全店舗の売上一元化やEC顧客の店頭在庫取置、EC在庫を倉庫から発送し店頭受取するといったサービス提供が実現できます。今後このような機能を用いたサービスはますます広がっていくでしょう」