ECサイトは開設がゴールではない 実店舗の価値・体験と向き合おう
企業・ブランドが、オンラインでの販路開拓に取り組み、EC化率も飛躍的に向上したと見られる2020年。しかし、EC出店数と売上高の伸び率が比例しない点に、河野さんは危機感を抱いていると言う。
「EC化率が上昇しても、流通量が同様に増えていなければ、純粋に『EC化が進んだ』とは言えません。流通量が増えていないということは、パイの取り合いが発生しているということです。現時点では、実店舗の売上減を少しでもカバーできているのでよし、としている企業・ブランドも多いでしょう。しかし、オンライン上に店舗が溢れる状況下で、どのような対策を講じ『選ばれる店』になるかについて、真剣に考えなくてはならない時期に差し掛かりつつあると感じています」
新型コロナウイルス感染症の流行にともない、一時は機能不全にまで陥ったリアルのチャネルを補う目的で、ECサイトを開設したケースも多数存在するが、2020年は消費者の需要変化もあり、従来通りの売上を立てることが難しい1年であったことは間違いない。ものを売ること自体は、即席で立ち上げたECサイトでも可能だが、これまでの実店舗の提供価値や顧客体験は再現できていないのが現状ではないだろうか。
「消費が落ち込む中でもECサイト立ち上げにより売上を伸ばすことができたのであれば、経営者は現時点の成果を素直に評価すべきです。しかし、ECサイトは開設してゴールではなく、その後の磨き込みが欠かせません。2020年に何ができたかを考え、結果に対する評価をきちんと行った上で、2021年以降何をすべきか。とくに、顧客体験向上に向けた取り組みは重要となります。」