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2024年6月6日(木)10:00~17:40(予定)

[ECzine Press Summer 2020]ECで困ったらこの1冊!BtoB EC編

BtoB-ECで営業の仕事はなくなるか 真のDXをもたらすECの可能性を渥美英紀さんに聞く


 コロナ禍で急速に進む、BtoBでのEコマースの導入。接触を避けるべく商取引をデジタル化せざるを得ない環境に追い込まれたからだが、果たしてそれだけで満足してよいものだろうか。書籍『BtoBウェブマーケティングの新しい教科書』(翔泳社)の著者であり、BtoB分野でのデジタル活用に詳しい渥美英紀さんに話を聞いた。

BtoB-EC化しなくてよかった業種業態も検討を その理由とは

――ECと言えばBtoCでの小売がメインでしたが、コロナ禍でBtoB商取引のEコマース化も進んでいるようです。これまで諸事情で進まなかったデジタル化が、一気に加速したという見方でよいのでしょうか。

 経済産業省の『電子商取引に関する市場調査』(2020年7月)にもあるように、日本国内のBtoC-EC市場規模は19.4兆円、BtoB-EC市場規模は353.0兆円と、もともとBtoB-ECのほうがはるかに規模が大きいのです。この市場規模には、EDIによる企業間取引も含まれているため、皆さんがイメージするオープンなECとは異なるものですが、電子商取引であることは確かです。一般消費者がクレジットカード等を利用し、楽天市場やAmazonで買い物をするようになる10年以上前から、企業間ではすでに電子商 取引が積極的に行われていました。

 オフィス用品のアスクル、ファクトリー・オートメーションのオムロン、最近ではSaaSベンダーのサブスクや各種クラウド製品など、Eコマースと相性が良いビジネスモデルの企業は早くから取り組み、磨きをかけています。そうではなく、あえてEC化してこなかった企業は、ECでは売りにくい、システム投資効果が見合わないビジネスモデルだから。コロナ禍で対面営業が難しくなったとはいえ、ウェブ会議システムでオンライン商談を行えばよく、EC化するだけで売れる環境には至らないと考えます。

 商取引をEC化することで、営業担当や営業支援部門の作業が減り、業務効率化が進むのは確かです。目的が業務効率化であるならば、安価なECシステムを用いてECサイトを作れば済んでしまう。それでは、真の意味でDXとは言えないでしょう。ECの本質的な価値をもう少し長い目でとらえることが重要だと思います。

株株式会社ウィット代表取締役 渥美英紀さん
BtoBのさまざまな業界の売上アップ・ブランド強化・営業改善など250以上のプロジェクトを担当。

――では、ECの本質的な価値をとらえたBtoB-ECとは?

 重要なのは「ECによる業務効率化は、戦略の多様性をもたらす」という点です。

 第一段階目の変化として、業務効率化が推進されることにより、これまでは手が回らなかったスモールビジネスや遠方・海外などの顧客もターゲットにでき、販路拡大が期待できます。また、営業が営業にまつわる定型業務からの解放されることで、より重要なターゲットに工数を割くことも可能になるでしょう。これだけでもBtoB-ECは、十分に可能性を秘めていると言えます。

 第二段階目の変化として、データの質が変わります。 BtoBのマーケティングは、営業部門のSFA(営業支援システム)、マーケティング部門のMA(マーケティングオートメーション)、カスタマーサクセス部門のCRMと、3部門の3システムが連携する形が多くの企業でとられています。しかしながら、それらの連携がうまくとれているか、といえばすべての企業はそうではありません。営業担当がテキスト入力するSFAは定性的なデータが多く、客観的に分析しづらい情報を多く含みます。マーケティング部門のMAはオートメーションと言いながら、人間が判断してシナリオを描いていたり、メール配信システム程度の使いかたをしている企業もまだまだあります。CRMにデータが蓄積されLTVの分析をしたいものの、リードタイムが1年を超える商品ではMA、SFAと紐づけて、正確な分析をすることは困難です。そのため、それぞれの部門でKPIを追う形になるわけですが、それでは各施策が個別最適化になりがちでした。もし商取引がEC化すると、マーケティング施策からリード化、購入、再購買の流れ、LTVなどのデータが一気通貫で分析できるようになり、データリッチに変わります。

 現状のBtoBのマーケティングの主力手法であるシナリオベースからパーソナライズへと、一皮むけるのです。これは今やりたくとも、パーソナライズの源泉となるデータそのものがなければできません。このレベルまでもっていくことができれば、大きく戦略も変わります。営業のマンパワーを気にせず大量のリード獲得や商談化ができ、マーケティングをガリガリと進められるようになります。部門間の連携が十分でない状態では、1リードの獲得にかけられる費用は数万円だったところが、LTVまで見通せれば何十万円以上かけても元がとれるかもしれないとわかります。あらゆる施策実行までのスピードも格段に早くなるでしょう。

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