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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

オイラ大地・白石のCX研究所

ふたつの事例から学ぶ 選ばれるための顧客との向き合いかた

 ここ数年で注目が高まっている「CX=Customer Experience(顧客体験)」について、基礎的な考えかた~実践的なフレームワークまでをできるだけわかりやすく紹介する連載です。最終回となる第4回は、実際に素晴らしい顧客体験を提供している企業の実例をお届けします。※本記事は、2020年3月25日刊行の『季刊ECzine vol.12』に掲載したものです。

 ここまで3回にわたりお届けしてきた連載も、ついに最終回となりました。素晴らしい顧客体験を提供するために取り組むべきステップを「理解(準備)」「分析」「実行」と3つのフェーズに分けてご説明してきましたが、今回は、実際に素晴らしい顧客体験を提供している企業の実例を取り上げていきます。そして、私自身がこれまでの活動を通してたどり着いた「顧客体験構築で大切なポイント」について、お伝えいたします。

事例1:顧客に他社購入を促すことを推奨する会社「ザッポス」

 王道すぎる事例で恐縮ですが、顧客体験を語るうえでこの企業は外せません。ザッポスは、アメリカにある靴を中心としたアパレル用品のECを手掛ける企業で、売上は2015年時点で3,000億円を超えているにも関わらず、新規顧客の43%をクチコミで獲得、顧客のリピート率は75%を誇る素晴らしいサービスを作り上げています。数々の逸話を残すザッポスですが、そのなかから印象的なエピソードをひとつご紹介します。

ある顧客がラスベガスに旅行に行ったときのこと。お気に入りの靴を忘れてしまったため、ザッポスで同じ靴を購入しようとしました。その靴は以前、ザッポスから購入したものだったのです。しかし、ザッポスでは品切れ。顧客は落胆してしまいます。そこで、コンタクトセンターの社員は顧客に待ってもらうようお願いし、最寄りの靴屋に片っ端から連絡。顧客が求めている靴を探し当てました。そればかりでなく、その靴屋に出向いて自ら購入をし、顧客が滞在するホテルまで届けてくれたのです。

書籍『ザッポスの奇跡(改訂版)~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(石塚しのぶ/廣済堂出版)より

 驚くべきエピソードですが、彼らは自社に在庫がない場合、他社のECサイトで在庫を探すサポートを行い、そのまま他社での購入を促します。そのような行為は、「自社の売上にはならないし、競合他社への乗り換えのリスクをともなう」と思われるのが普通だと思います。しかし、ザッポスではその行為が推奨されているのです。それはなぜなのでしょうか。

キーポイント:顧客に幸せを届けることがCXの役割

 彼らは自分たちを以下のように定義しています。

「顧客に幸せを届けることが仕事で、その一環として靴を販売する集団」

 この「顧客に幸せを届ける」という点がとても重要です。前述のケースで言うと、「意中の靴を手に入れること」が顧客の願い(幸せ)です。そのために、わざわざ自分の時間を割き、もっとも信頼を寄せているザッポスに連絡をしてくれているのです。そんな顧客に対し、「在庫がありません、申し訳ありません。」という対応では、顧客の課題は何も解決されていません。顧客に幸せを届けるのであれば、自社・他社関係なく靴を手に入れられるようにすることがザッポスにとっての正解なのです。そして、ザッポスではそのような行動がコールセンターの担当者個人の裁量でできるようになっており、企業全体として「顧客の幸せの実現」を追求していることがよくわかります。

 CXの役割とは何なのか。それは、顧客が抱える課題解決や、実現したい理想を叶え、「幸せ」を届けるものです。そのために、徹底的に使いやすさや心地良さを高め、顧客が「エフォートレス」で「気持ち良く」ゴールに到達できることを心がけるのが重要なのです。

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この記事の著者

オイシックス・ラ・大地株式会社 CXO 白石夏輝(シライシ ナツキ)

学生時代のインターンからそのままオイシックスに新卒で入社。その後、新規、既存顧客向けのプロモーション活動に従事し、2018年10月より同社CXOに就任。全社を横断での食のデリバリー事業における顧客体験の向上に取り組んでいる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/7566 2020/05/18 07:00

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