メルペイ導入第2号 化粧品ECプラットフォーム「NOIN」での成果は
2019年5月にリリースとなったメルペイのネット決済機能。ECサイトでメルペイが決済手段として利用できるこの機能は、取材時点で50サイトが導入を決定している。メルペイの特徴は、フリマアプリ「メルカリ」で不要品を売って得た売上金が利用できるのに加え、メルカリでの過去の利用実績等をもとに商品購入代金を後払いで決済ができること。消費者にとってみれば、もうひとつのお財布ができたようなものだ。10月の増税で消費が冷え込むとの予想もあり、メルペイに期待しているEC事業者も少なくないだろう。
2019年9月には、化粧品ECプラットフォーム「NOIN」がメルペイを導入。導入から1.5ヵ月で、もっとも利用される決済手段になり、平均購入金額ももっとも高いと言う。ユーザーの平均年齢が26歳というNOINで、メルペイが選ばれるという事実。顧客も運営側もクレジットカードを持っているのが大前提のEC業界で、今回のNOINとメルペイの取り組みから学ぶことがありそうである。
ノイン・千葉久義さんとメルペイ・遠山義幸さんに対談してもらった。
千葉(ノイン) メルペイがECサイトに導入できるようになったことは、メルペイ代表・青柳さんのTwitterを見て知りました。最初の導入サイトは「SHOPLIST」ということで、ぜひNOINでもやりたいとメルペイさんにお声がけしました。
メルペイ導入以前は、クレジットカード、キャリア決済、GMO後払い、コンビニ後払い、Apple Payを決済手段として用意していました。GMO後払いとコンビニ後払いが圧倒的に多く、クレジットカードは「持っていない」「持っていても一度も使ったことがない」といった声をよく耳にしていました。
一方でユーザーインタビューなどから、メルカリとNOINのユーザー属性が非常に近しいことは確信を持っていました。NOINユーザーは平均26歳、ほぼ100%メルカリを使っています。NOINユーザーが決済手段にメルペイを選ぶのは、自然な流れではないかと考えていました。
遠山(メルペイ) ネット決済機能をリリースし、まずはメルカリと相性の良いカテゴリの企業様に導入していただきたいと考えていました。最初の導入先が「SHOPLIST」様になったのは、メルカリの中でもアパレルが非常に多く取引されていることが背景にあります。
次にエンタメ・ホビーや、NOIN様のようなコスメのカテゴリでした。メルカリで多くの取引が成立しているということは、売上金を多くお持ちのユーザーがたくさんいらっしゃるということなので、そういったカテゴリの企業様に導入いただきたいと考えていました。NOIN様の開発力により、とても短い期間で実装いただきました。
千葉(ノイン) 現状はアプリのみですが、導入を決めて実装するまで2週間くらいでしたよね。直近30日で、決済手段のうちもっとも利用され、決済平均金額がもっとも高いのもメルペイになりました。カートあたりの決済金額は、他より20%ほど高いです。はじめにお話した時にメルペイさんから「財布が違う感覚があるので消費はされやすい」と聞いていて、感覚でそうだろうなと思っていましたが、実際にそうだったとわかりました。現在、ウェブへの導入を実装中です。早くやりたいですね。
というのも、ユーザーの反応が非常に良く、TwitterやInstagramで「NOINでメルペイ使えるの神!」といった投稿をよく目にしています。新規ユーザーが入ってきているのも、狙いどおりでありがたいです。他の決済手段では買わなかったけれど、メルペイでは買う。ユーザーが広がっている感覚があります。コンビニ後払いからの移行も起きています。
遠山(メルペイ) メルペイとNOIN様のユーザー層が親しいこと、メルカリの中でもアクティブに動いている層であること、そして、メルカリの売上金額を上乗せできるのでグレードが高い商品を購入しやすいのが要因だと考えています。
千葉(ノイン) 「メルペイのあと払い」の金額は7万円が限度額でしたっけ?
遠山(メルペイ) 自分で設定を変更できますし、限度額は人によって異なります。メルカリでの取引や支払いなどの条件から判断され、現状では20万円が最大です。
千葉(ノイン) 相当使っているつもりだったんですが、20万円はまだ設定できないみたいですね(笑)。
遠山(メルペイ) 20万円が設定できる方は、相当なヘビーユーザーだと思います。月末に後払いで使った金額の支払いを行う際、コンビニ払いや銀行引き落とし等の方法も可能ですが、メルカリで不要な物を売るという選択肢もあります。このようにメルペイが使われることによって、メルカリでのやりとりもさらに活発になると考えています。
千葉(ノイン) 想定以上に相性が良かったので、メルペイさんとは他の取り組みもできたらいいですね。たとえばカート落ち対策。NOINユーザーの特徴として、カートに違うものを10個も20個も入れてすごく比較検討するんです。決済までのユーザビリティを上げることは、カート落ちを防ぐひとつの施策になるのではと考えています。
遠山(メルペイ) メルカリのユーザーIDでのログインも構想の中に入っています。会員登録から決済までを簡単に行えるので、コンバージョンアップに貢献できると思います。また、メルカリならではのサービスとして、「一次流通と二次流通を循環させる仕組み」を展開していく予定です。ECサイトにおいて、メルペイで決済が行われた際に、メルカリ側で「持ち物リスト」という購入履歴のような機能を用意します。将来的に、その商品が不要になったタイミングでメルカリに簡単に出品することができるようになります。
千葉(ノイン) それが実現できるかはまだ未知数ですが、たとえば色物コスメの場合、少し使ってメルカリに出品するといった行動はすでに起きているようです。メルカリのような受け皿があると、さまざまなコスメにトライしやすくなるというのはあるでしょうね。
増税で消費が落ち込むとの懸念も世の中にはありますが、たとえ購入する商品の価格帯が下がったとしても、女性がコスメを買わないということはないと思います。それよりもNOINユーザーのような若い層の場合、クレジットカードへの抵抗のほうが大きいと思います。ECにおいては、決済手段が及ぼす影響は大きいのではないでしょうか。
遠山(メルペイ) これまで相性の良いカテゴリのEC事業者様への導入を進めていましたが、今後はメルカリの売上金で購入されやすい、あらゆるカテゴリのEC事業者様に導入いただきたいと考えています。メルペイとして掲げる「オープンネス」のコンセプトどおり、さまざまなパートナー様とお話しているところです。2020年は拡大フェーズととらえていただければと思います。(了)