OMOを意識した組織づくり ビームスの組織変更のとらえかた
本誌創刊当初よりオムニチャネルの定点観測をお願いしている逸見さんに、本号の特集テーマであるOMOに対する見解を求めてみた。
「ネットとリアルの融合という概念は、クリック&モルタルやO2Oと、呼びかたは違っても昔から存在していましたよね。デバイスの進化やSNSの発展によってチャネルの数は増えましたが、お客さまとの接点を強化し、LTVを上げていくという根幹の思想は今も昔も変わっていません。ただ、『マージ=融合』なので、各チャネルで独立して利便性を追求するのではなく、あらゆるチャネルや仕組み、評価をきちんと統合してお客さまの利便性向上に取り組む必要があります。やっと本質の議論に踏み込めるのではないでしょうか」
3月19日に開催したイベント「ECzine Day」に登壇した、アパレル企業のビームスでEC部門を統括する矢嶋正明さんは、OMOを意識して自社のEC部門を縮小し、各ブランドの傘下へ組み込むことにしたと語ってくれた。逸見さんはこのやりかたを「本質的に一番強くなる方法」と評した。
「アパレル企業の多くは、まずブランドごとに組織を区切り、その中に数少ない『ECを解っている人たち』を配置させている印象があります。評価の軸が定まっていない中でどれだけ彼らが一生懸命取り組んでも、結局ブランド全体としては『店舗を強くしなきゃ』という話に収束してしまい、EC担当者が孤立してしまうんです。土壌を作った上で、今度はブランドごとにより深く店舗やECの接点を強化していけるよう組織を変更したビームスさんのやりかたは素晴らしいと思います」
評価の話題が出たところで、マネジメント層がOMOをどう捉えるべきか聞いてみた。
「評価基準を考えることは、すなわち目標を設定すること。昔は単純に『ブランドの売上目標=店舗の売上目標』と捉えれば良かったですが、販売チャネルが多様化した今はそういうわけにもいきません。そこで、ブランドの売上目標の内訳を店舗売上でいくら、EC売上でいくら、とチャネルごとに細分化するのか、結果的に双方のアシストを含めた関与売上の最大化によって、ブランドの目標額を達成すればチャネルの内訳はただの指標のひとつとするのか、マネジメント層は目標設定の仕方を考えなければならないでしょう」