ビジネスフローの見直しなしのシステム導入は現場の無駄な仕事を増やすだけ
2018年7月から、ASPカート「MakeShop」を運営するGMOメイクショップのオムニチャネルスーパーバイザーに就任した逸見さん。仕組みの話ではなく、顧客満足を高めることで顧客とのエンゲージメントを深め、企業の継続的な利益を得るビジネス/マーケティング思考としてオムニチャネルを理解し、実践してほしいという意図で引き受けたと言う。
就任から半年が経った今、MakeShop案件に限定せず、小売・流通事業者(クライアント側)からシステム導入に関する相談が増えたとのこと。よく出くわすのは、「最終的に、そのシステムを導入するべきなのか、誰も決められない」という場面だ。
「業務フローを描けないことが原因です。最近では、よりわかりやすく、『ビジネスフロー』と言い換えているのですが。縦軸にその会社のビジネスが進行していく流れ(予算化→仕入/製造→各チャネルでの販促/販売→顧客サポート/代金回収……)、横軸にそのステップにかかわる社内外のチームをお客さまに近い順に並べていく。そのExcelのセルにタテヨコが重なる部分を書き出していくだけで、業務と組織の関係が流れで見える化できるはず。このフローが描けないので、その場で話しているシステムがどのステップに影響を及ぼすのかがわからず、結果システム選定が行えないんです」
意外に思われるかもしれないが、これは流行りの電子決済にもかかわってくる。今回の定点観測でも、多くの人が取り上げたPayPayのキャンペーン。逸見さんが気になったのは、店舗でのオペレーションである。
「率直に、中国の電子決済であるAlipayやWeChatPayと比較して使いにくいなと感じました。ユーザーは割引の魅力で使っているにすぎない。店舗側にとっては、従来のビジネスフローに、集客施策として面倒なものがひとつ上乗せされたという印象でしょう」
電子決済に限らず、最近は大手企業を中心にニューリテール系のテクノロジーを実験的にテスト導入(PoC)し、メディアを賑わせているが。
「PoCは本来、一部の店舗で実験し、他の業務やオペレーションへの影響を見て、全店展開していくために行うものです。それが最近では、話題作りのためなのか、“やってる感”を出すためなのか、テスト導入して終わりという事態が相次いでいる。結果、経営層は『だからデジタルは……』となる。これもビジネスフローとシステムが切り離されていることによる弊害です」