おせちが届かない EC化率アップで日常茶飯事に
2018年12月、ヤマト運輸が「冷凍」と「冷蔵」を誤り、おせち1,268個を配送できなかった件が報じられ、話題になった。伊藤さんはこれを、物流の需要と供給の均衡点をマネジメントできなかったために起きた、「物流クライシス」を象徴する1件だと評する。
「配送業者の方が集荷に来てはじめて、荷物の量や大きさを把握しているのが現状です。そこで難しい荷物に即時に対応するのは難しい。需要をコントロールすることはなかなか難しいので、需要を事前に把握し、供給をコントロールしていく必要があります」
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によればEC化率は約6%(5.79%)、国土交通省の調査によれば、年間宅配便取扱個数は約40億個。EC業界を中心に、EC化率の伸びは期待されているが、一方でそれによって発生する荷物を運びきれるのかについて、すでに昨今の物流クライシスによって不安視されている。
「EC化率が2倍になるポテンシャルはあると思います。しかし、その結果生まれる80億個の荷物を運ぶため、ドライバーを2倍にできるかというと難しい。結果、EC化率だけが伸びると、おせちが届けられなかったような事態が日常茶飯事になるでしょう。物流がボトルネックになって、EC化率にストップがかかることを懸念しています」
運送業者の対策としては、運賃を値上げし、その費用でドライバーの待遇改善を行って採用を強化したり、宅配ロッカーを作ったりといったことを行っている。しかし伊藤さんは、「ドライバーを2倍に増やすまでの効果は期待できない」と言う。
その解決策のひとつとして、伊藤さんは「データを活用した配送ネットワークの構築」を提案する。なお、この考えは伊藤さん独自のものではなく、物流のトッププレイヤーの間では議論されていること。しかし、とくにEC事業者に向けて積極的に発信されているわけではないから、ここで敢えて取り上げる。