自社製品の「製品力」を知ったうえでの事業展開を
今回から2回続けて、「製品」分野のお話をします。EC/通販事業は小売業としての「商売」を上流から下流まですべて含みますので、数多くの局面があります。それらの局面を数値化・指標化して分析を行い、課題発見や解決を日々行っている方も多いかと思います。
しかしビジネスの根っこを考えれば、お客様に提供する製品・サービス価値の最大値以上にはビジネスの規模は広がりません。そのため、まず最初に、自分たちが扱う製品の「製品力」がどの程度なのか、を知ったうえで事業展開を考えることは当たり前であり、必須です。お客様に提供するべき価値のある製品であるという前提を満たしてこそ、あらゆるノウハウは初めて役に立つのですから。
その前に、まず通販支援を手掛ける事業者側の理屈をおさえておきましょう。
EC/通販事業を手掛ける方の多くは、事業実務の全てを内製せずに、複数の分野で支援パートナー企業に実務を託しているのではないかと思います。代表的なものでいえば、広告、販促、コールセンター、物流、インフラなどを担うパートナーでしょうか。内製化しきれないそれぞれの分野において、プロフェッショナルの意見を参考にし、協業することで、自社事業の最大化を目指していると思います。
その際、各パートナーはその分野のプロであり、その分野の最適解は提示してくれますが、事業全体を見通した、全分野を通した最適解であるかの判断をしてくれることは稀です。これは考えてみれば至極当然のことです。
多くのパートナーは何らかの強みや自社がもつリソースがあり、それをクライアントに利用してもらうことで初めてビジネスとなるわけです。何らかの課題にぶつかった時、広告代理店は広告の手法やクリエイティブに、CRMならそのフローやツールに、コールセンターは顧客応対率やその満足度をベースに、自分の土俵の話をするのが当然です。
ですから、全体視点でのインパクトや課題優先順位の判断は、クライアント側で分野担当を超えた事業運営の視点がなければできません。とはいえ、それほど難しいわけでもなく、四則演算でクロス集計を重ねるだけで十分可能です。この全体視点における影響の試算・管理の仕方については、この連載の中で別途解説いたします。