データを蓄積してさらなるリアルタイム与信へ 対面決済も
――Paidyというサービスをもっと良くするため、直近でお取り組みのこととは?
杉江(Paidy) さらに普及させていくことです。現在、ユーザーアカウントが約100万口座(2017年11月時点)ですから、多くのお客様のデータをまだ取得できていないということです。もし仮に、日本国民全体のデータがあれば、現時点で平均0.5秒かかっている審査時間を、さらにリアルタイムに近づけられ、結果としてEC事業者様にもより良いサービスを提供できるわけです。
池谷(TIプランニング) 先ほど、決済サービスとしては後発のサービスと申し上げましたが、提供から約3年で100万口座分のデータを持っているというのは、すばらしいことだと思います。杉江さんがおっしゃったとおり、ユーザーを拡大し、データを蓄積していくことでサービスの精度を上げていっていただければと思います。
杉江さんから、「クレジットカードライク」との表現がありましたが、後払い決済とクレジットカードは競合するものではない、というのが私の考えです。クレジットカードを使っている人はそのままクレジットカードで決済するでしょうし、クレジットカードを利用しない層が後払い決済をはじめとする別のサービスによってECを利用するようになり、それが売上に繋がるかもしれません。日本のEC化率は5%程度ですから、まだまだ伸びしろがあり、その拡大に後払い決済は貢献するのではないでしょうか。
杉江(Paidy) 池谷さんがおっしゃる通り、クレジットカードとの直接競合だとは捉えていません。また、後払い決済にくくられがちですが、取引毎に請求書を出すサービスと競合するとも考えていません。Paidyは翌月にまとめて支払う、本格的な与信を伴うサービスです。Paidyのエンドユーザーの方は、20代未満を中心とするクレジットカードヒストリーのない方々が中心です。その方々に、クレジットカードライクなサービスを提供していきたい。「アンダーバンクト(underbanked)」という言葉がありますが、年齢などの理由から十分な金融サービスを受けられていない人が、世界的には50%にのぼるとの調査結果もあります。そういった方々に、本来受けられるべき、さまざまな金融サービスを提供したいというところまで視野に入れています。
――まさにフィンテックですよね。仮想通貨も話題になりましたが、プロから見た決済のトレンドはどのようになっているのでしょうか。
杉江(Paidy) キーワードは「Identification(識別)」だと考えています。ID決済もそうですが、最近は顔認証も出てきていますよね。その人がその人であるということを認証できる技術が浸透していきます。もうひとつは「ビッグデータ」。膨大な行動ログが蓄積されていて、決済で言えばその人のお支払い意思や能力がわかりますし、今後ディープラーニングが普及してくると、「これから何をしたいのか」「どれくらい悪いことをしそうなのか」までわかるようになってくる。その結果、決済は大きく変わります。レジで打ってもらう必要がなくなりますし、実物の現金を渡すという概念もなくなり、データで取引が済む形になっていく。現状はまだ、すべての準備が整っていませんが、そういった未来に向けて半歩先を行くのがPaidyだと考えています。
池谷(TIプランニング) クレジットカードが主流だったところに、プリペイドカードやデビットカードが登場し、最近では楽天ペイやLINE Payも登場して、決済の裾野が広がってきている。2020年に向けたキャッシュレス化を目指して、決済業界は盛り上がってきているなと感じています。一方で、サービスが乱立し、消費者がそれに追いついていないという面もありますので、いくつかのサービスは淘汰される可能性もあるのではというのが正直なところです。
杉江(Paidy) おサイフケータイに代表されるNFCの時代は、読み取るデバイスを実店舗に配らなければいけないという膨大なコストがかかりました。しかし今は、スマートフォンにより、お互いがピッとすれば決済が済むようになってきていますよね。たとえば、実店舗を持つ事業者さんのアプリとPaidyが連携して、アプリを提示した時点で支払いも済んでいるという未来もあり得る。するとユーザーも慣れてくるのかなと思います。