ECの売上が上がらないなら、『集客』の前に『チーム』を見直そう
川添さんは、アパレルにかかわる数社を経て、2013年メガネスーパー入社、同12月にECサイトをリニューアル。リニューアル後の自社ECサイトの単月売上は前年比210%、前月比133%、そこから半年で前年比173%に売上を伸ばした実績を持つ。現在は、デジタル・コマースグループのジェネラルマネジャーとして活躍。具体的には、EC、デジタルコミュニケーション、オムニチャネル推進、全社でのデジタル活用の推進などを行っている。
今回のトークセミナーのテーマは、「自社のフェーズに合ったシステム、ECツールの導入と成果を見抜くコツ」。本題に入る前に、ECの売上をアップするためのメソッドとして、最初に必要なのは「EC事業の組織(チーム)」だと述べた。
「これは実店舗であろうが、ECであろうが同じで、売上が上がっていない店舗というのはチームとして機能していない。ECでこわいのは、商品登録をして、メルマガを配信して、受注が入ったら出荷するというルーチンワークになりやすいこと。受注が入れば、その次に出荷という流れが決まっている分、頭で考えなくなってしまうことがあるんです。それを防ぐために、立て直しに向けて僕が最初にやるのは、週次で会議をやって『先週の振り返りと、次週の予算と売上予測の乖離をどんな施策(工夫)で埋めていくか、さぁ、みんなで考えましょう』といった、考える機会の設定です。
実際に考えるためのアクションの軸になるのが、『販売手法』『在庫・MD』『集客』の3つです。これが、僕流のEC売上アップの公式とも言えます。『訪問数×転換率×客単価』がセオリーですが、実はこの公式のうち、コントロールできるのは『訪問数』くらいしかないので、実際のアクションには移しづらいんです。実店舗よりもお客様に主導権があるECで、客単価は本当に上げにくいですし、転換率は割り算なので分子の『購入件数』と分母の『訪問者数』の上下で変動してしまいます。実際に僕が何をやってきたかを振り返ってみると、『販売手法』『在庫』『集客』の3つを強化してきたと気づきましたし、こちらのほうが注文数を増やすためのアクションにつなげやすいと考えています。
この3つのうち、もっとも重要なのは『集客』だと思われるかもしれません。とくに新規に立ち上げたサイトは『集客』が必須です。でも実は、実店舗や卸のような既存の流通チャネルがあってECを始める場合は、『売れる在庫』を確保できるかどうかのほうがよっぽど影響力が大きいし、お客様が望む販促やサイトの見せかたに対応したほうが売上につながります。つまり『お店』としてきちんと機能させて、『売れるお店』をつくるほうが重要なんです。優先順位としてこのふたつが整ってから、『集客』に取り組むべきだと考えています」
ツール(1)ECパッケージの選びかた
「自社のフェーズに合ったシステム、ECツールの導入と成果を見抜くコツ」。まず川添さんは、「よく聞かれること」としてECパッケージの選びかたを伝授してくれた。
「よほど大きなECをつくろうとするのでない限り、まずはASPカートから始めるという選択でよいと思います。オープンソースを用いる場合は、それを用いてECを制作する制作会社の実績を確かめること。海外のオープンソースは、日本のサービスが軒並み越境ECに弱いことから、越境をやるうえでは選択肢の上に上がってくる。
パッケージになると初期費用1,000万円以上が基準になるので、継続的なEC事業の成長やオムニチャネルの整備を視野に入れての投資になるでしょう。一方で、基本的にはパッケージはECの機能がある程度備わっています。データベースなどの基盤は出来上がっていて、ECの機能はすべて独自で開発するという、パッケージとフルスクラッチの間のようなサービスもあります。これは『運用フロー』を変えたくないとか、二次流通のように通常のパッケージでは対応できない場合に当てはまります。そして、年間売上が50億以上くらいになるとスクラッチ開発になってきます(稀に特殊な業態で小規模のスクラッチもあります)」