2.「囲い込み戦略」のほころびから見えてくる新戦略
会員登録になんらかの抵抗を感じる一般ユーザーが96%だと述べたが、事業者側は「会員登録を嫌がっていない」と49%が回答するなど認識に違いがある。ポイントやメルマガに関するニーズも同様だ。
会員登録に抵抗を感じる理由のひとつとして、個人情報流出問題がある。調査結果を見ても、一般ユーザーが中小のECサイトに対して抱く不安として、「個人情報流出(75.3%)」「カードの不正利用(71.8%)」が1位、2位となっている。対策を講じることはもちろん重要だが、定着してしまったイメージを払拭するのは、1サイトの努力だけではなかなか難しいのが現状だ。
会員登録に抵抗を感じることにより、せっかく集客し、カートまで進んだにもかかわらず、コンバージョンしない、つまり「カゴ落ち」に陥っていることが調査結果からも読み取れる。
カゴ落ち率は、グローバルで見ても上がっており、その理由は「スマートフォンにある」と川連さんは言う。個人情報の入力が多い会員登録は、スマートフォンではさらに手間を感じるはずだ。
では、海外企業はどのように対応しているのだろうか。たとえば、デジタルへの取り組みが日本よりも数年先に進んでいるというアメリカでは、EC売上げトップ100では26社、トップ25では2社しか、強制的な会員登録を必須にしていない。ちなみに日本は、トップ100では70社、トップ25社では21社が必須にしている。
「会員登録しないと購入できない『強制式』ではなく、『消費者に選択の自由を与える』必要があるのではないでしょうか。決済画面では、『会員登録』と『ゲスト購入』のふたつが並んでいて、1回めはゲスト購入でもいいという発想です。まずはそのお店のことをよく知ってもらい、『店長さん、いい人だな』といった体験をしていただく。それから会員登録をしていただいて、メルマガや販促を打つほうが、効果も出やすいのではないでしょうか」(川連さん)