4億円売ったキリン堂、独身の日の施策を聞く
村山らむね 2015年11月11日の「独身の日」ですが、キリン堂さんでは目標金額を達成されたということで、おめでとうございます。具体的な金額は、お聞きしてもよろしいですか?
伊藤(キリン堂) 4億5,000万円ほどで、天猫国際に出店する日本企業で1位、世界でも4位の売上です。昨年は1億8,700万円でしたから、約2.4倍と大きく伸ばすことができました。
村山らむね ノンシリコンシャンプーを販売されたということですが、成功の要因は何だったのでしょうか。
伊藤(キリン堂) 当社では通年、天猫国際で『レヴール』を売らせていただいているのですが、昨年は、単品のシャンプーとトリートメントをそれぞれ準備しましたが、今年はシャンプーとトリートメント、そしてハンドソープ、クレンジングシートをセットにしたオリジナル商品を作り、単価も上げました。15万セット以上の在庫を用意し、予約の段階で4万セットが完売、当日で用意した在庫がすべて完売しています。
村山らむね すばらしいですね。天猫では「独身の日」までに予約しておく仕組みがあるんですよね。予約はいつから始まるのでしょうか。
伊藤(キリン堂) 「独身の日」の1ヶ月ほど前の、10月13日からスタートです。30%くらいのデポジットをあらかじめ入れておいて、「独身の日」当日、夜中の1時から購入するという仕組みになっています。予約の段階で4万セットが売れたというのは、かなり良い数字のようです。
村山らむね 商品は上海に用意されたのですか?
伊藤(キリン堂) 杭州の保税区に用意しました。保税区は非課税ですから、転売などを防ぐため、お客様おひとりのIDで1個しか購入できません。また、99元以上は税金がかかるので、「独身の日」の商品価格は99元以下に設定されていることが多いです。ですから、当日の購入単価は通常よりも安めで2,600円程度、送料はショップが負担するというのが「独身の日」の決まりごとのようになっています。
村山らむね ひとり1個の規制がありながら、完売とはすごいですね。メーカーさんも驚かれたでしょう。
伊藤(キリン堂) 昨年は驚かれていましたが、今年はそうでもなかったですよ。というのも、5月くらいから、「御社と一緒に企画商品を作って、『独身の日』にはこれくらい売りたい」という交渉を始めていましたから。それでも、日本の通常の注文数を遥かに上回る数なので、実際にご準備いただけたのは、想定よりも少なめでしたが。もし30万セット用意できていれば、30万本売れていたのではくらいの手応えがありました。こちらは来年の課題ですね。
村山らむね メーカーさんが作りきれないほどの量とは、本当にすごいですね。天猫国際でも、日本と同じ品質のものを売っていらっしゃるのですか?
伊藤(キリン堂) 日本で売っているものと同じものを売るのが天猫国際のルールですし、中国ユーザーは日本のものを欲しがっていらっしゃいますから。一方で、日本で売れているものを並べれば売れるだろうというスタンスではおりません。
「この製品を使っていただくと、髪質がこう変わりますよ」と、ストーリーを持った商品説明をサイト上で展開して、予約販売中にじっくりと読んでいただけるように準備していました。先ほども申し上げたとおり、通年で『レヴール』を売らせていただいていまして、その売上の集大成が「独身の日」なわけです。
村山らむね 昨年7万5,000本ほど販売されて、リピーターの方もいらっしゃったわけですよね。1年間使い続けた方が、今年もまた使い続けるために、「独身の日」でまとめてガンと買われたというケースもあるのでしょうか。
伊藤(キリン堂) そうですね。「使い続けることで髪質が変わってきた」「キリン堂の『レヴール』は安心だ」といったクチコミもいただいています。当社では、キリン堂が扱う商品は正規品だという「授権証」も掲載し、商品価格もオープンにして、中国のお客様に信頼いただけるよう努めています。
村山らむね 今回の「独身の日」1日で売り上げた4億5,000万円のうち、商品の内訳はどのようになっていますか?
伊藤(キリン堂) 『レヴール』が4割を占めていて、ほかには、花王様の『めぐりズム』、コーセーコスメポート様のシャンプー、洗顔、ハンドクリームを出品しました。とくにコスメテックスローランド様の馬油のハンドクリームは香港で人気があり、当初3万個を用意していたのですが、追加注文が来て、5万個まで増やし、完売しました。これらの商品で8割以上のシェアを占めています。
今回の挑戦のひとつに、詰め替え商品を販売したというのがあります。中国では、詰め替え文化がそれほど浸透していないんですね。ですから、『レヴール』の製造元であるジャパンゲートウェイ様に、「一緒に詰め替え文化を作りましょう」とお話しして、仕掛けたわけです。
セットには、ハンドソープ、クレンジングシートも入れたと申し上げましたが、それは今後、ジャパンゲートウェイ様が中国で、メルサボンというブランドを推していきたいとのお考えをお持ちだったからです。
村山らむね オリジナル商品によって、「ここでしか買えない」を作られたわけですね。
伊藤(キリン堂) はい。一方で、決してやらないと決めていたのは、「シャンプーを1本購入していただいたら、もう1本プレゼント」といった販促施策です。お客様も「これは実際には、いくらなんだ」と思われるでしょうし、安売りはしない。
メーカー企業様とも、『3年後、どのようにキリン堂と取り組みたいとお考えですか』という視点を持っていただき、お打ち合わせを何回も重ねて、今回のような企画商品を一緒に作っていただくことができましたから。
村山らむね 今年度の目標は、どれくらいに設定していらっしゃいますか?
伊藤(キリン堂) 10億円ほどで、ほぼ達成できると思います。 日本の国内のドラッグストア市場では13位の企業が、天猫国際の舞台ではコストコさんはじめ、世界に名だたる企業さんと肩を並べて売り上げているという事実を、当社だけでなく、チームジャパンとして共有し、チームとしてさらなる高みへ挑戦して、成長できればと思います。