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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

マイクロソフト×パートナー対談「未来のEC」を語る(AD)

[対談]デジタルデバイドが進む小売業界 オークファンが目指す「ロジカルなEC」とは

商品マスタをきちんと持ち、データを見ることから始まる

得上(オークファン) まだ研究開発の段階ですが、日本の大手小売企業さんのお手伝いをしています。その企業は、すでにネットスーパーを運営しているのですが、「ECをやっている」ではなく、まだ「やりたい」の段階です。なぜなら、商品マスタがないから。紙にバーコードを印刷したものを、リーダーで読み取って「仕入れ」をしている段階ですからね。それを、機械学習やクローリングで、自動的に生成することができないかと取り組んでいます。

具体的には、店舗の販売員の方に、スマートフォンで、商品のJANコードと加工食品品質表示の枠(バーコード)の2ヶ所を撮影してもらい、クラウドにアップロードしてもらいます。OCR(光学式文字読取装置)でテキスト化して、JANコードを検索することで商品マスタを作り、Eコマース上に載せることができるようになります。これが実現すれば、レジにカメラを2台置いておくだけで、これまでのやりかたは変えずに、Eコマースと連動していくことができるわけです。

増渕(日本マイクロソフト) スーパーやコンビニに行くと、割引シールが貼ってある商品は、紙のバーコードをスキャンしていますよね。裏側がつながっていない証拠だなと思っていました。

得上 そうなんです。そういうことをやっているうちは、POSの解析も何もできないんですよね。現状多くの企業が、裏側をつなぐ代わりに、ポイントカードを入れてデータを取得しているわけです。プロダクト・インフォメーション・マネジメント(PIM)という考えかたがあるのですが、商品の情報を管理していくという仕組みが、日本ではまだまだ未熟です。

増渕 PIMというと、ハード系の製造業のもののようなイメージがあるからかもしれませんね。ECを最適化するためには、実は小売側もPIMで、商品の情報を自由に管理できるような仕組みを実装する必要がある。

得上 そもそも欧米では、業界団体で商品情報のマスタを管理していて、小売店に自由に提供しています。メーカーはそこに入れておけばいいし、小売はそこから情報をとってくればすぐに売り始められるので、みんながハッピーなんです。一方日本は、自分たちのデータは自分たちで抱え込みたいという発想で、そうした団体がうまく機能していない。

増渕 先ほどの事例のようなアナログな小売事業者さんと、デジタルネイティブというか、ITを使って最適化しようとしているEC事業者さんとは、これまでは一緒に成長してきましたけれど、今後は道が分かれていくんでしょうね。オークファンさんはそれをわかっていて、機械学習に投資されたりしているんでしょうけれど。

得上 市場規模で見ると、ネットオークションの外側にEコマースがあって、その外側に小売があって、それぞれ10倍くらい大きくなっていくんですね。オークファンでは、徐々に外側の広いほうへ出て行きたいんですけれど、アナログな小売までいくには、まだまだ時間がかかるし、世代交代が必要かなとも感じています。

増渕 外側の大きな、アナログな世界に、機械学習やビッグデータアプローチが有効だろうと、オークファンさんは取り組んでいらっしゃるわけですよね。枠を越えようという行為そのものが、世の中を変えることにつながっていると思います。行き詰まりを感じているかもしれない小売事業者の方が、外を見る前に、自社の固定的な数値を見直すきっかけになるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、いま、システム構築の継続的な改善が注目を集めていて、それは、ビジネス側もそういうことになってきているからだと思うんです。システムとビジネスはコインの表裏一体で、常に新陳代謝をしていく必要がある。

ビジネス側が新陳代謝をするためのはじめの一歩が、データを見ることです。きちんとした商品マスタがあって、社内のさまざまなビジネスコンポーネントがアクセスできるようになっている。そういう環境が整っていれば、売値が決まり、利益を踏まえて、仕入れ値を最後に決めるといった、一見不思議な技も、当たり前のようにできるかもしれない。

得上 継続的な改善のためには、直線ではなくて、PDCAのようなサイクルを回し続ける必要があるんですよね。そこをなんとか、コンピュータで手助けできないのかと。

増渕 しかもそれは、ひとりの人間や、マーケティング組織の中でやることではなく、全体で。マーケティング活動の結果をオペレーションに反映させて、それの結果をまたマーケティングに反映させてという。

得上 そう、広い範囲で。その機械化のひとつの結果が、「機械学習」なのかなと。

増渕 機械学習自体を、世の中のすべてのビジネスマンが深く知る必要はないんですが、機械学習によって何ができたかの事例をたくさん知ることで、新しい発想ができるので、ぜひ知ってほしいですね。

得上 おそらく、いま機械学習を触っているのは、ある程度知見がある人たちで、まったくわかりませんという人がやる市場ではないんですよね。そういう意味では、機械学習をある程度やってきた人たちが使いたいのは、Microsoft Azureだと思います。Google Prediction API等が活きてくるのは、機械学習がもう少しコモディティ化してから。

増渕 機械学習をうまく使える可能性があるのは、情報システム部とは限りません。たとえばAzure Machine Learningは、WEBデジタルマーケティング系や、金融業界の数理科の人たち、もしくは、マーチャンダイザーなどの数字で実作業を通じて課題解決してる人たちにフィットします。彼らにとってのMicrosoft Azureは、単なるサーバーではなくデータプラットフォーム、もしくはビジネス自動化のツールと言えるでしょう。

得上 ECに限らず、人間のヒューリスティックな部分をアルゴリズム処理するのが機械学習ですからね。ヒューリスティックな部分がないままに、いきなり機械学習やってみようとしてもうまくいきません。

増渕 そうですね。毎日CSVをアップロードするなり、情報をExcelにまとめるなり、一度自分の手を動かしてみると、その作業を機械化するイメージがモデル化できると思います。

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この記事の著者

ワダ スミエ(ワダ スミエ)

2013年11月11日〜2023年3月31日までECzine編集部在籍。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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https://eczine.jp/article/detail/2221 2020/06/16 15:00

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