海外からの問い合わせがきっかけ!車のパーツ販売「KTS-WEB」
数百円台のスピンターンノブから、数万円を超える車高調(取り付け費込み)まで、車のパーツをウェブで販売する「KTS-WEB」を運営するカインドテクノストラクチャー(以下、KTS)は、車の整備工場から始まった会社である。
埼玉県の南鳩ヶ谷にある本社は、まず1階に整備中の車が数台並び、つなぎに身を包んだプロフェッショナルたちが、黙々と仕事に励んでいる。高い天井を見上げながら、工場左脇の階段を上がっていくと、今度は、スーツに身を包んだデスクワーカーたちがパソコンに向かっている光景に出くわす。彼らが取り組むのは、ネットを活用したBtoBビジネス、そして通信販売だ。
通信販売は、2003年に法人向けから開始。現在では、国内向けに自社サイト、楽天市場、Yahoo!ショッピング、Amazon、海外向けには、自社サイト(英語、ロシア語、中国語)、Amazon.com、そしてeBay(アメリカ)に出品している。
海外販売は、日本語サイトに海外からの問い合わせが複数寄せられていたことから開始。英語のECサイトをオープンしたことで、さらにその問い合わせは増加した。なかでも、反響が大きい国は、アメリカ、カナダ、インド、シンガポールとのこと。
海外販売のECにかかわる人数は4名で、バナーの制作、商品画像のアップ、企画、サイト運営、海外に出向いて調査も行っている。全体を統括するのは中川竜介さん、主にデザイン等制作を担当するのは笠原麻未さんで、2人とも前職でネット、ECを経験した転職組だ。
「eBayは、管理画面などすべてが英語なので、はじめはとっつきにくかったのですが、商品を出品したり、ページを作ったりという作業に関しては、問題なくできました。海外のお客様からお問い合わせが入った場合には、どうしても英語が必要になるのですが、幸い社内に英語ができる者もおりますし、外部の方にもご協力いただいてなんとかやっています。
もしeBayさんに注文したいことがあるとすれば、スマホサイトがシンプルすぎるところでしょうか。出品者が自由にバナーを出せたり、Description(商品説明)を修正したらボタン1つ押せば反映されるというふうに、もっと自由度が上がると、さらにありがたいですね」
KTSでは、他のサイトと比較して、eBayに手応えを感じ、2015年4月から本格的に取り組み始めた。まずは出品数を増やすことに注力し、それまで5,000ほどの商品点数だったのを、この取材時点で、2万点目指して取り組んでいる。
「国内のECでも、出品点数が多ければ多いだけ、売り上げもついてきますので、海外販売でも同様だろうという考えです。また、同じ商品でも車種によって異なるので、多くのお客様のニーズに応えるためには、否応なしに出品を増やさなければという事情もあります。その準備ができたら、広告やSNSなどで販促施策を打っていきたいですね」
車好きは世界共通か 日本の売れ筋が海外でも売れ筋に
売れ筋は、車高を調整するサスペンション。購入者のほとんどが個人とあって、海外の車好きが、日本の高性能なパーツを求めてサイトを訪れていることがわかる。
「サスペンションは、数万円するものもある高額商品なのですが、日本でも売れ筋商品です。ならば、海外でもこれから始めてみようと考えたわけです。ほかにもいくつか出品してみて、高い商品も売れるのだということがわかりました。国内では価格競争が激しいので、うれしい発見です」
一方で、車のパーツの海外販売ならではの苦労もある。
「サスペンションのことを、コイルオーバーと呼ぶ国もあったりして、日本と海外では同じ商品でも呼び名が違ったりするのですね。車の名前や、発売の年式も違うので、混乱することもあります。商品情報を翻訳するのもひと苦労ですが、そのあたりのチェックも欠かせません」
KTSでは、翻訳を社内で行っている。車種に関する辞書を独自に作成しているが、先述のような事情で、スピードアップはなかなか難しく、これからも効率化に励んでいくとのことだ。
日本スピードが海外のユーザーには「ファンタスティック!」
購入者と出品者間で評価しあう「フィードバック」は、eBayで販売する事業者にとって重要な指標だ。2015年4月から本格的に取り組んでいるKTSでは、まだ集めている最中ではあるが、「早くて素晴らしい」というコメントが多く寄せられていると言う。
「料金が支払われてから商品を発送するまでの『ハンドリングタイム』を3日にしていて、これは日本と同様のスピードで取り組んでいます。『日本から発送されているのに、こんなに早く届くなんて、ファンタスティック!』とすごく喜んでくださるので、うれしいですね。メールの返信も、日本では当たり前のスピードで返しているのですが、早いとお感じになるようです。
海外販売というと、カスタマーサポートが不安だと思われる方も多いと思いますが、このように日本では当たり前のサービスに喜んでくださる方が多いと感じています」(笠原さん)
「eBayさんでは、評価が下がると販売に関して制限がかかってしまうので、規則は守るなど、当たり前のことをきちんとやったほうがいいと思います。ただし、我々のように英語ができない人間が運営していても、評価は下がらないので、そこに関しては心配は不要でしょう。もちろん、英語は必要になってくるのですが、お問い合わせへの返信だけ外部に委託するといったこともできますから」(中川さん)
こうしたサービスのほか、一度購入したユーザーにリピーターになってもらおうと、KTSではチラシ入りのポケットティッシュを同梱するなどの気配りも行っている。
カスタマイズの楽しさを、eBayを通じて海外にも伝えたい
eBayでの本格的な販売に取り組んで数ヶ月ながら、ヒット商品も生まれ、ファンもつきつつあるKTS。これから、どのような取り組みに注力していくのだろう。
「今後は、たくさんの商品を販売して、世界中にKTSの名を、eBayを通じて広めたいと思っています。 当店自慢の車パーツを販売することで、ただ乗るだけではない車のカスタムの楽しさを、国境を越えて伝えていきたい。また、KTSならではの価値やオリジナリティを高め、やっぱり買うならKTSで、と思っていただけるような運営をしていきたいです。
世界中の人たちが自分たちの商品を購入し、使っていただけたら本当にうれしく思います。国内だけでは見つからなかった、新たな発見もできるかもしれませんし」
最後に、これから越境ECに取り組みたい、eBayの利用を始めたいと思っているEC事業者に、アドバイスをいただいた。
「当社も、海外販売を開始したばかりですが、これから海外販売を始めたいと考えている方に渡せるメッセージがあるとすれば、『まずはやってみる』ということでしょうか。日本で販売してきた実績や経験は海外でも通用すると、eBay販売を通じ、実感しました。まずは怖がらず、積極的に始めてみる、ということをお伝えしたいです。
とはいえ、発送方法や決済管理、言語などの運営に対する不安が大きいかと思います。ただ、日本語サイトのあるDHLやPayPalを介すれば安心して取引ができますし、eBayのサイトの出品や受注業務も一度覚えてしまえば、簡単に処理をすることが可能なので、そうした不安はすぐに解消されるかと思います。言語に関しては、社内で対応が難しいようであれば、代行業者はいくらでもありますし、先にも述べたとおり、当社もお世話になっています。
現在、日本の商品は、電化製品や家具、サブカルチャー、日用品までさまざまなジャンルにおいて、海外での人気が高いうえ、クオリティの高さも認められています。日本ではあたりまえでも、海外のお客様からしたら宝物のような商品もたくさんあるはずです。eBayを通じて海外での人気商品を知ることができることも楽しみのひとつではないでしょうか」