「今在庫があって買える」が来店の重要トリガーになる時代に
「店舗の“できていない”をなくす」をミッションに、店舗情報の一括管理・更新、口コミの管理分析、インバウンド対策など、集客・売上につながる一連の機能を提供する「口コミコム」。開発する株式会社movは、同プラットフォームの提供を通じて消費者の変化と店舗・自社ECをもつ小売事業者の課題を次のように見ていたという。
「これまでのユーザージャーニーは、いわゆる『AISAS※1』が一般的でした。しかし、ここ数年でSNSの影響力は格段に高まり、UGCから始まる購買行動モデル『ULSSAS※2』が主流になりつつあります。つまり、『検索が起点』ではなく利用者の声などの『コンテンツが起点』となって、購買につながるケースが増えているのです」(赤司氏)
※1 消費者が商品やサービスを購入するまでのプロセスを「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Action(購買)」「Share(情報共有)」の5段階に分けた行動モデル。 株式会社電通が提唱。
※2 株式会社ホットリンクが提唱するSNS時代の購買行動プロセス。「UGC(ユーザー投稿コンテンツ)」「Like(いいね・リポスト)」「Search1(SNS検索)」「Search2(Google/Yahoo!検索)」「Action(購買)」「Spread(拡散)」に分けられる。
この購買行動の変化によって、ユーザーとのタッチポイントは複雑化し、小売店はオンライン・オフライン問わずあらゆるチャネルでの情報発信が求められるようになった。しかし、これまで実店舗への集客施策といえば、オンラインではMEO対策、オフラインではポスティングやチラシといった施策に限られていたのが実情だ。
こうした課題を解消するため、同社が新たに提唱しているのが、店舗情報や商品在庫状況を活用したデジタルマーケティング手法「ローカルインベントリマーケティング」だ。その浸透とスムーズな実現に貢献すべく、同社は2025年9月に口コミコムのオプションサービスとして、Google検索・Googleショッピング・Googleマップ上に商品の情報や店舗の商品在庫情報をスムーズに表示できる「ライトOMOサービス」の提供を開始している。
「近年は、消費者の変化により購入前に商品の在庫情報を確認する行動が一般化しており、在庫情報は今や来店を促す重要な要素となっています。movが独自に行った調査でも、実店舗で購入前に商品在庫を確認するユーザーは71%、在庫があると行動が促進されるユーザーは77%にのぼりました。
店舗購入の動機は『実物を確認したい時』『サイズや質感を確かめたい時』『すぐに手に入れたい時』が半数以上を占めていることと合わせて考えると、自社ECで興味をもった商品の店舗在庫の有無がわかれば、来店の後押しとなることは間違いありません」(赤司氏)
また、「AIモード」の登場に代表するように、Googleの検索体験そのものが大きく変わりつつある点も見逃せない。
「今後、ユーザーにとってAIによる回答が検索の標準となる未来も十分に考えられますが、このAIが参照するのが『正確でデジタル化された情報』です。すると、集客施策の考え方も変わり、在庫情報をAIが参照できる形でGoogle上に表示させる工夫が必要となります。こうした背景もあり、私たちは在庫情報を効果的にマーケティングに活用する手法としてローカルインベントリマーケティングを提唱しています」(牧村氏)
「買いたい」を逃さないローカルインベントリマーケティング 実施のメリットは?
ユーザーが商品を検索した際に、「その商品を扱っている近くの店舗」の在庫状況や店舗情報を表示できるローカルインベントリマーケティング。これに取り組むことで小売事業者が享受できるメリットについて、赤司氏・牧村氏は次の三つを挙げた。
- 購買意欲の高いユーザーの店舗誘導
- 新規ユーザーとの接点創出
- ユーザーの利便性向上
「たとえば、オンラインで『これだ!』といえる商品を見つけた際、『色やサイズ感を確認してから購入したい』『今すぐ手に入れたい』と思ったことはないでしょうか。
ローカルインベントリマーケティングを実施していれば、こうしたユーザーが商品検索をした際に近隣店舗の在庫の有無を表示できます。すると、ユーザーは安心して店舗に足を運べますし、購入確率も高められます」(赤司氏)
来店機会を創出できれば、実店舗ならではのディスプレイやスタッフによる接客で関連商品の紹介など併売に向けたアプローチも実施できる。EC以上に客単価の向上を図りやすく、OMOを推進する上で有効な手段といえるだろう。
「また、新規ユーザーとの接点創出も、ローカルインベントリマーケティングで得られる大きなメリットです。たとえば、店舗情報や在庫情報を連携させた商品は、Googleショッピングでの検索視認性を高められます。『スニーカー』など、指名検索以外のキーワードで検索したユーザーに自社商品を知ってもらう機会が増えれば、商品ページの閲覧、自社ECへの遷移、実店舗への来店増といった効果にも期待できるでしょう。ブランド認知の拡大と直接購入の促進どちらにも作用するのが、ローカルインベントリマーケティングの特徴です」(赤司氏)

「ローカルインベントリマーケティングは、ユーザー視点でも良い作用をもたらします。オンライン上で事前に店舗の在庫状況を把握できれば、『せっかく足を運んだのに、欲しい商品が売り切れていた』といった残念な体験を避けられます。また、目当ての商品がイメージと違ったとしても、別の商品を手に取ったり、スタッフと会話をしたりして、新たな購買行動が生まれるかもしれません。これはオンラインだけでは生み出せないスムーズかつ貴重な顧客体験であり、実店舗ならではの強みです」(牧村氏)
メリットが明確であるにもかかわらず、なぜ小売業界ではこれまでローカルインベントリマーケティングが進んでこなかったのだろうか。これには、業界特有の課題や固定観念が関連していると牧村氏は分析する。
「店舗集客では、既にMEO(ローカルSEO)が浸透していますが、小売業界においてはあまり重要視されていませんでした。『Googleマップを見て来店するお客様はいない』と断言する小売事業者も少なくない状況です。
店舗在庫をGoogle上に表示する仕組みも、以前からGoogleマーチャントセンターで提供されていますが、こちらも小売業界ではほとんど活用が進んでいません。膨大な数の店頭在庫データを手動で登録するのは現実的ではないからです。こうした思い込みや運用のハードルが、小売事業者のローカル施策を阻んでいました。
movでは、これらのボトルネックを解消するためにライトOMOサービスの提供を開始しました。同機能は、在庫情報のデジタル化をいかに手軽に実現するかに焦点を当てたもので、Googleマーチャントセンターの無料ローカルリスティングの仕組みを活用し、膨大な数の商品を一括で連携できます。これで、手軽にローカルインベントリマーケティングを実施できるようになりました」(牧村氏)
AI検索時代に選ばれる店舗へ 短期間で手応えを得たローカルインベントリマーケティング事例2選
小売事業者のコミュニケーションを大きく変える可能性を秘めたローカルインベントリマーケティングだが、気になるのは実施後の成果だろう。牧村氏は、movが支援した事例の中から成果につながった代表的なものを二つ紹介した。
事例1:セレクトショップを展開するアパレル企業
「まずは、セレクトショップを展開するアパレル企業様の事例です。新たな施策としてローカルインベントリマーケティングを実施した結果、Google検索・Googleショッピング・Googleマップにおける店舗や商品情報の露出が2ヵ月で大幅に向上しました。その後も季節に合わせた商品露出や商品情報を充実させる運用によって、毎月継続的な効果を得ています」(牧村氏)

事例1の企業が得た成果
- Googleでの間接キーワード(例:メンズシャツなど)経由の流入数が増加
- ECサイトでの購買数が月20〜30件増加
- 店舗へのルート検索数が前年同月比23%アップ
事例2:オリジナル家具などを製作するインテリアメーカー
「次に紹介するのは、オリジナル家具などを製作しているインテリアメーカー様の事例です。メーカーの多くは自社商品が検索された際、ECモールや卸売店のECなど自社EC以外の数多くのサイトが一緒に表示されます。こうした環境下では、自社ECがGoogleショッピングの検索上位に表示されにくく、自社での販売機会を逃しがちです。実際にこちらの企業様も、施策に取り組む以前はフリマサイトが上位に表示されたり、メーカー名で検索しても無関係な商品が表示されたりしていました」(牧村氏)
同社は、ローカルインベントリマーケティングに取り組むことで、Googleショッピングの検索画面における自社商品の占有率を向上。ブランド名で検索したユーザーを確実に自社ECへ誘導できるようになり、自社EC経由の売上アップにも成功している。

事例2の企業が得た成果
- Googleショッピングの検索画面の大部分を自社商品で埋め尽くすことに成功
- ブランド名で検索したユーザーを自社ECへ誘導
- 自社EC経由の売上向上
インバウンド旅ナカ消費対策にもなる在庫情報表示 スムーズな実現は「ライトOMOサービス」で
小売事業者にとって、売り物であり資産ともいえる在庫情報がマーケティングに活用できるライトOMOサービス。同機能は、2025年10月に経営統合した株式会社Patheeが提供する主力プロダクト「STORECAST」に搭載されていた集客支援機能が前身となっている。

「STORECASTの既存顧客に行ったヒアリングでも、その価値が高く評価されていることを確認し、改めてサービスとしての将来性を確信しました。こうした機能は、ゼロからmovで開発するよりも、既に小売領域で専門性と確かな開発技術をもつPatheeとタッグを組むほうが市場のニーズに最も早く確実に応えられると判断し、現在は両社の強みを掛け合わせながら、小売の店舗・EC送客最大化に向けた取り組みを加速させています」(赤司氏)
「私は従来、STORECASTの開発・運営を指揮していましたが、口コミコムのライトOMOサービスはSTORECASTの従来モデルと比べ、様々な進化を遂げています。開発スピードも格段にアップし、よりスピーディーにブラッシュアップできる体制が整いました。インバウンドやオンラインマーケティング支援に強いmovと、オフラインの小売支援に特化したPatheeの強みや特性を掛け合わせ、さらに強固なローカルインベントリマーケティングを実現していきたいです」(牧村氏)
インバウンド支援にも強みをもつmovいわく、訪日外国人に向けた旅ナカ体験向上にもローカルインベントリマーケティングは活用できるそうだ。旅マエに検討していた欲しい商品が今いる場所の近くで購入できるとわかれば、スムーズに来店を促せる。こうした需要にも対応すべく、同社は2025年10月に口コミコムのオプションサービスとして「多言語フィードオプション」の提供を開始している。
「今後は、オンラインとオフライン両方の領域で、小売事業者に確実な価値を提供できるオンリーワンの存在になっていきたいと考えています」(赤司氏)
「AIの普及により、ユーザーが『この商品はどこで買えるの?』とAIに尋ねるのが当たり前な未来は、そう遠くないものとなりつつあります。現時点では、AIはローカルの在庫を参照していないためリアルタイムな回答はできませんが、それが実現し、事前に在庫データを連携している企業だけがAIにレコメンドされる未来はそう遠くないはずです。
こうした先の世界線を見据えながら、ライトOMOサービスなどの機能を通してユーザー目線で便利に、かつ小売事業者の売上にも貢献できる価値を追求し、小売市場の新しいスタンダードとなる世界を創っていけたらと考えています」(牧村氏)

