習慣そのものが変化した? 今のSearching・Streaming・Scrollingの役割とは
今回、Googleは現代の情報探索行動を把握するため、デプスインタビュー、定量調査といったメジャーな調査形式のみならず、スマートフォンの画面録画で行動を共有するデジタルエスノグラフィー(n=45)、生活空間の中で習慣的な行動や文脈をとらえるホームビジット(n=7)といった多様なアプローチを採用。朴氏は、こうしたスタイルを取った理由について、次のように説明した。
「情報探索行動は習慣的に行われているものが多く、状況によってもやり方が大きく異なります。そのため、無意識的な行動の意味そのものを探ること、そして行動を実際の生活文脈と結びつけて理解することが重要だと考えました」
こうした定性・定量を交えた入念な調査によって、朴氏は「3つの情報探索行動の役割について、変化が見られた」と説明。ここからは、その詳細について見ていこう。
Searchingは“意図に合った情報”を導き出すためのものに
かつては、「キーワードに関する情報を絞り出す方法」であったSearching(検索)。目的の情報にたどり着くには、いわば辞書を引くように的確なキーワードの選定と情報の絞り込みを行わなければならなかった。
「しかし、現代の検索は入力されたキーワードの背後にある意図を読み取り、より意味のある情報を導き出す方法へと進化しています。
また、動画・画像・対話型検索と形式の多様化も進みました。従来は『検索』といえばGoogleのような検索エンジンの活用を指していましたが、現代はSNSやECプラットフォーム内での検索も一般化しています。旅行に行く前にSNSで良いホテルを探し、Googleで検索してクチコミや評価の確認と価格比較を実施。最安値のプラットフォームで予約を取るといった横断検索をする場面も見られました」
朴氏はこのほかに、現代のSearchingの象徴的な例として、実店舗で気になった商品をその場で撮影して画像検索する、対話型AIに旅行先で次の目的地を相談する、商品購入後に改めて検索してUGCをチェックするなどといった行動パターンを紹介。今やSearchingは、シチュエーションやファネルを問わず、興味関心の拡大や発見、確信を得るための手段として活用されている様子がうかがえた。
Streamingは“情報取得”から“疑似体験”にまで拡張
動画や音楽の視聴を意味するStreamingも、コンテンツ量の増加と質の向上により、単なるエンタメの享受ではなく、自身の興味関心に合致した情報取得の場へと進化を遂げつつある。
「たとえば、エクササイズや旅行の動画は一種の疑似体験として機能し、行動するきっかけにつながっています。商品の開封・利用動画や、ライフスタイルとともにアイテムを紹介するコンテンツも同様です。『手に入れたら良い体験が得られる』と確信を与えたり、『自分の生活にも取り入れたい』といった強い動機を生んだりすることで、購入を後押しします」
プラットフォームが提供するレコメンドも、生活者の興味関心の拡張に寄与している。情報発信の場はオンラインだが、生活者の行動はリアルにつながるケースも多く、チャネルをまたぐ強力なエンジンとして見逃せない存在になりつつあることは間違いない。
Scrollingは“潜在的ニーズ”と“有意義なセレンディピティ”を生むものへ進化
最後に朴氏が紹介したのは、従来はニュースや掲示板、検索結果など興味のない情報も含まれる中から自身が求めるものを探すために行われていた、Scrollingの変化だ。
「AIの発達により、今は次々と流れてくる情報すら個人の趣味嗜好に最適化されています。そのため、流し見をしていても有意義な発見(セレンディピティ)につながるケースが増えており、調査の中では『探していないけど知りたい情報が流れてくる』と表現していた方もいました。これはまさに的を射た表現で、現代のScrollingは潜在的なニーズの掘り起こしと新たな欲求の創出に寄与する情報行動だといえます」
Scrollingから人々が大きな影響を受けた例としてわかりやすいのが、「SNSでたまたま“100均財布界隈”という言葉が流れてきて、自分も真似してみた」「某そばチェーン店の一部店舗に存在する限定メニューをわざわざ食べに行った」といった行動だろう。たまたま接触した情報であるにもかかわらず、実際に足を運んだり購買をしたり、手間のかかる行動につながっている。無意識下にあった興味関心をくすぐる生活者接点として、Scrollingをどう攻略するか。これは、企業やブランドにとって非常に重要な命題になりつつあるといえる。
