Makuake後、自社ECを主軸に展開した理由とは?
菊地(マクアケ) さて、ここからが本題です。Makuakeで大きな成功を収めた後、多くの事業者は一般販売での販路に悩みます。マクアケとしても、Makuake後の一般販売市場での支援を今後より注力していきたいと考えています。ARASさんは自社ECを主軸に、楽天や百貨店のポップアップなどリアル店舗も展開されていますが、Makuake終了直後、どのような販路戦略を描いていたのでしょうか? 各チャネルが果たす役割について、当時のお考えを伺えますか。
水上(ARAS) はい。まずMakuake終了後に最優先で取り組んだのは、今おっしゃっていただいた通り自社ECサイトでの直販でした。
菊地(マクアケ) やはり、利益率も高く、お客様と直接繋がれる自社ECが第一歩だったのですね。
水上(ARAS) そうですね。ただ、それだけが理由ではありませんでした。ブランドが立ち上がった2020年当時は、まさにコロナ禍の真っ只中。百貨店への営業や、対面での商談が非常に難しい時期でした。
ですので、「まずは自分たちでコントロール可能で、かつ確実にできることをやろう」という方針を固め、自社ECサイトの構築と運営に集中することにしたんです。
菊地(マクアケ) なるほど、外的要因も大きく影響した「選択と集中」だったわけですね。しかし、自社ECは立ち上げただけでは売れません。「集客」という大きな壁に突き当たります。
水上(ARAS) まさにおっしゃる通りです。私たちも「サイトは作ったものの、どうやってお客様に知ってもらうのか」「どうやってサイトに流入していただくのか」が、立ち上げ当初の最も大きな課題でした。
この課題に対して、自分たちの知識だけでは到底足りない。そう痛感したため、専務である石川の繋がりでお声がけした広告代理店の方々とタッグを組み、ECの販売戦略そのものから一緒に考えていくことにしました。
菊地(マクアケ) 自社の弱みを認識し、すぐに外部の専門家の力を借りる判断をされた。これは重要なポイントですね。では、実店舗への展開はどのように進められたのですか?
水上(ARAS) 実店舗に関しては、自社ECやSNSでの発信を見てくださった小売店様から「取り扱いしてみたい」とお声がけをいただく形で、少しずつ始まりました。
私たちのブランドへの想いや世界観に共感してくださる小売店様も多く、「一緒にやっていきたい」という思いで、お取り組みを進めていきました。闇雲に販路を広げるのではなく、ブランド価値を共に高めていけるパートナーシップを重視した結果、現在の形になっています。
新商品、セール、広告で成長の波を作る
菊地(マクアケ) Makuake実行者がECなど一般販売で苦労をする一番の要因が「集客」です。ARASさんは専門領域のパートナーと組むことで、この壁をどう乗り越えていったのでしょうか。
水上(ARAS) Instagramの投稿自体は社内で行い、代理店の方々とは連携しながら、特にMeta広告の運用と、広告から遷移させるためのランディングページの作り込みに注力しました。
菊地(マクアケ) そこから売上が「グッと伸びた」と感じる、ブレイクスルーのきっかけはありましたか?
水上(ARAS) 最初の明確な伸びは「深皿スクープ」を発売した時だったかなと思います。それ以外にもMakuakeで買ってくださった方がリピート購入してくださったことが、大きな推進力になりました。

菊地(マクアケ) なるほど、初期のファンが最初の起爆剤になったと。
水上(ARAS) はい。ただ、最初の頃はまだ手探りでした。次なる成長を感じ始めたのは、初売りや秋祭りといった大きなセール施策です。ここでさらに新しいお客様に知っていただく機会を増やせました。新商品の投入とセール施策、そして広告運用。これらをうまく組み合わせることで、成長の波を作っていった形です。
菊地(マクアケ) 「深皿スクープ」は独特のフォルムで、まさにARASさんにしか作れない形ですよね。他に代替品がないような存在感がある。このユニークな商品がフックになって新しいユーザー層が広がり、そこから平皿やお茶碗などの商品へのクロスセルも生まれて客単価が上がった、というような仮説も考えられますが、いかがでしょうか。
水上(ARAS) 最初にARASに触れていただくきっかけとしては、そうかもしれません。その上で、そこから色々なテーブルウェアのラインナップに触れていただくことが大事だと思っています。ARASでは、洋食器から和食器、カトラリーまであります。なので、ラインナップが増えていって受け皿がちゃんとあったというのも大きかったかもしれません。
菊地(マクアケ) なるほど。自社商品を企画する上で特に意識していたことはありますか。
水上(ARAS) 私たちとしては、独自性の高い商品を作ることを意識していたわけではなく、あくまでも「お客様の食体験をどうすればもっと良くできるか」を起点に、最適な形や素材を突き詰めていきました。その結果として生まれたプロダクトに共感し、選んでくださる方がいるのだとしたら、とても嬉しいです。