株式会社I-neは2025年8月25日、同社オフィスで「今後の成長に向けた施策説明会」を実施した。8月1日に新たな研究開発組織「日本美科学研究所(JBIST)」の設立を発表した同社。施策説明会では、代表取締役社長 大西洋平氏、日本美科学研究所 所長 竹内啓貴氏が、JBISTの立ち上げ背景や今後の展開、またAI開発企業との共同研究について詳しく解説した。

I-neは「BOTANIST」や「YOLU」といったヘアケアブランドのほか、美容家電ブランド「SALONIA」などを展開してきた。創業以来、工場を持たないファブレス体制を軸としている。
同社の成長は、「ブランド創出力」「OMO」「IPTOS(I-neが独自に運用するブランドマネジメントシステム)」という3つの強みによって支えられている。施策説明会では、これら3つの強みをさらに進化させるための取り組みとして、新たな研究開発組織であるJBISTや、IPTOSへのAIエージェント実装について紹介された。

インハウスの研究所で商品開発のスピードを加速
JBIST設立の目的の一つには、商品開発における工数負担の削減がある。従来のOEM(製造受託会社)との協業では、プロトタイプ(試作品)の検証に約2週間を要し、このプロセスが機会損失につながっていたという。JBISTでは、研究開発を内製化することで、プロトタイプ評価期間を約85%短縮できる見込み。竹内氏は、この取り組みについて「作って評価するサイクルを高速化し、初期段階から確度の高いアイデアを具現化できる」と説明した。また、開発プロセスの内製化により、開発コストの負担軽減なども期待される。


今後JBISTは、オープンイノベーションを推進し、東京大学や佐賀大学といった学術機関と連携することで、自社だけでは実現が困難な高機能製品の開発を進める方針。
AI活用の推進でマーケティングの初期工程を再構築
I-neは、パフォーマンスエンジニアリング技術を展開する株式会社フィックスターズとの共同研究を開始した。マーケティング領域における先進AI活用を推進するとしている。ブランド開発モデルのIPTOSをAIでアップデートし、「IPTOS 2.0」の構築を目指す。これにより、市場調査やSNSでの「バズ」の分析精度と実践のスピードを向上させる考え。
大西氏によると、I-neの強みは、定量データに加えて「感性」を重視した商品開発にあるという。同氏は、AIを活用することで、感覚的だった施策検討の方法をアップデートし、新たなヒットを生み出すための予測精度を高めるとした。
なお、I-neは2028年〜2030年をめどに売上高1,000億円を目指す。今後は、主力のヘアケア・美容家電事業で安定的な利益を創出しつつ、スキンケアや柔軟剤、オーラルケアなどのカテゴリーを新たな成長の柱として育成していく。
海外展開については、インバウンド需要を活用し、ファンを増やしていくという。大西氏は「I-neはヘアケアカンパニーではなくビューティーカンパニー」と強調。今後もベンチャーマインドをもって革新的な挑戦を続けていく姿勢を示した。