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【リアル×オンラインのハイブリッド開催】ECzine Day 2025 October (2025.10.9)

頑張る地方企業にフォーカス~北陸編~

自分たちの手で切り拓く「酒造りの新時代」━━能登の老舗・数馬酒造五代目社長 数馬嘉一郎氏の挑戦

 EC化率の上昇・DXが進むにつれ、各地方でも取り組みの例が増えてきました。本連載では北陸地方に魅了され、自ら金沢に移住をしたLIFT合同会社 代表取締役の岡田吉弘氏が、日本ならではの伝統や文化を守りながら新しい挑戦をする事業者を紹介します。第3回は、能登半島にある老舗の酒蔵「数馬酒造」をご紹介します。日本でも最年少蔵元だと言われた事業承継から、能登半島地震からの復旧・復興まで、いろいろとお聞きしました。

能登半島地震からの早期復旧を実現した「ヨコのつながり」

 2024年元日、能登半島を震度7の地震が襲った。石川県鳳珠郡能登町にある老舗酒蔵・数馬酒造も被災、仕込み中のタンクが破損し、その後の断水によって酒造りは中断を余儀なくされた。

「1月は“寒造り(かんづくり)”と呼ばれる、酒造りの最盛期です。そんな大事な時期に地震で酒瓶やタンクが破損、木造の蔵も傾き、その後の長い断水もあり、酒造りは完全にストップしました。社員もみな被災して動けず、能登の契約農家のみなさんからお預かりしたお米が蔵に残された状態になりました」

 数馬酒造の五代目蔵元、数馬嘉一郎氏は当時をそう振り返る。

折り重なるように倒れた酒瓶ケース(画像提供:数馬酒造)
折り重なるように倒れた酒瓶ケース(画像提供:数馬酒造)

 先にその後の経緯を説明すると、数馬酒造の日本酒は震災の年の2024年3月に酒造りを再開させている。そしてこの記事を書いている2025年も、数馬酒造のお酒は市場に流通し、食卓やお店に届けられている。

 震災によって酒造りが止まり、社員全員が出社できたのは震災から約40日後の2月9日という絶望的な状況の中で、数馬酒造はどうして酒造りが継続できたのか。それは同業他社の酒蔵、いわばライバルたちからの支援があった。

「被災した醗酵室のタンクの中には、年始早々に清酒と酒粕に分ける上槽作業を迎える予定のもろみもありました。蔵の稼働は完全に止まっていて自力ではもうどうしようもないと諦めかけていたとき、県内外から多くの酒蔵のみなさんが救いの手を差し伸べてくださいました」

数馬酒造株式会社 代表取締役 数馬嘉一郎氏
数馬酒造株式会社 代表取締役 数馬嘉一郎氏

 蔵も水も止まっている以上、自力での酒造りはできない。そこで行われたのが、蔵内のもろみを運び出し、別の蔵で日本酒を造るという共同醸造だった。ほとんど前例のないことだったが、支援にかけつけた酒造仲間によってもろみは無事搬出され、それぞれの酒造とのコラボレーションとして発売されている。

共同醸造によって完成した「Saved by シリーズ」の竹葉
共同醸造によって完成した「Saved by シリーズ」の日本酒

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「社長をやってみるか」 先代の一言から誕生した最年少蔵元

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この記事の著者

LIFT合同会社 代表取締役 岡田吉弘(オカダ ヨシヒロ)

広告代理店、GoogleにてSEM黎明期から一貫してアカウントマネジメントの現場を主導し、最大手からスタートアップまで幅広く運用型広告の啓蒙・拡販に従事。アタラ合同会社、アナグラム株式会社、フィードフォースグループ株式会社、株式会社リワイア等の役員を経て、現職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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