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“届ける”をハック EC物流の今を追う

「Tabio」「靴下屋」の“縁の下の力持ち” 物流部門に聞いた、確実に届ける難しさと現場の想い

梱包やタグの表示など国別の細かい違い 手作業で対応する理由とは

──近年は、海外からの需要も高まっている印象を受けます。それにともなって、物流部門では、どのような工夫をされていますか。

丸川 以前は、実店舗への出荷が主軸でした。それが、コロナ禍をきっかけにECサイト経由の注文が急増し、お客様に直接商品をお届けする機会が増えました。加えて、中国向けの販売戦略が功を奏し、海外からの需要が大きく伸びています。

 それまでの繁忙期をはるかに超える注文が殺到し、まさに「パンクするとはこういうことか」と実感しました。元々は、国内と海外で部署が縦割りになっていましたが、この頃をきっかけに、部署の垣根を越えて全体で助け合う体制に変わりました。現在は、物流部門が繁忙期に入ると、検査・研究部門の従業員も手伝ってくれています。部署間のコミュニケーションが深まったのは、結果的に良かったと思います。

タビオ奈良株式会社 アシスタントマネージャー 丸川善子氏
タビオ奈良株式会社 アシスタントマネージャー 丸川善子氏

畑岡 まさにそのとおりで、私たちにとっては良い意味で考える機会となりました。これまでも商品を大切に扱うことは徹底してきましたが、EC需要や海外売上の拡大にともない、いかにお客様へ確実に届けるかという視点を、より一層深く考えるようになりました。

──海外出荷は日本国内への配送と比べて、何が違うのでしょうか。苦労している点や注意すべき点を教えてください。

丸川 海外配送は、現地の実店舗向けと個人のお客様向けの両方に対応しています。越境ECでは1件1件、日本から直接お客様へ発送するため、英語の伝票を当社で用意しなければなりません。そのため、どの従業員でも対応できるようなオペレーションを構築し、作業の標準化を進めています。

 実店舗向けとなると、国によって文化や慣習が異なるため、それに合わせて細かい作業が発生します。

 たとえば、中国ではPP袋があまり好まれない傾向にあるため、子ども向け商品であっても袋から出してタグ付けをしています。また、欧州では「綿100%」「ウール100%」と表記されたものなど、店頭販売に影響を及ぼす不要なシールを剥がさなければなりません。これらの作業は、人の手で行っています。

 タビオの靴下の裏糸には、フィット感を作り出すために伸縮性のある糸が使用されています。裏糸の種類は、主にポリウレタン糸にナイロン糸を巻いたものや、ポリエステル糸をポリウレタン糸に巻いたものなどです。国によって繊維の割合の表記方法には違いがあり、場合によっては靴下を組成しているすべての素材を厳正に表示しなければならないため、シールを剥がす作業が発生しています。

畑岡 実は、過去に自動梱包機を検討したこともありました。しかし、私たちが目指すクオリティには、まだ達していなかったんです。大切に作られた靴下を、同じように大切にお客様の元へ届けるという点で、現時点では人の手が必要だと考えています。

丸川 ただ、本社の商品部では、海外需要の高まりから新たな取り組みを始めています。今は国内と海外で商品のタグを手で付け替える作業が必要なのですが、将来的には共通のタグにすることで、付け替えの手間や資材の無駄を軽減できる予定です。小さなところから少しずつでも、国内外を問わず標準化が進むことを期待しています。

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“多能工化”による効率化の取り組みとは 限られたリソースで成果を追求

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この記事の著者

ECzine編集部 藤井有生(フジイユウキ)

1997年、香川県高松市生まれ。上智大学文学部新聞学科を卒業。人材会社でインハウスのPMをしながら映画記事の執筆なども経験し、2022年10月に翔泳社に入社。現在はウェブマガジン「ECzine」で編集を担当している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/17236 2025/10/27 07:00

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