検索せずともAIが自動表示 非計画購買の新パターン
非計画購買に、新たなパターンが増えてきました。近年、TikTokをきっかけに商品が売れる現象を「TikTok売れ」と呼ぶようになりましたよね。これは従来の「顧客が自ら検索して商品を探す購買行動」とは異なり、SNSを眺めているうちに自然と商品と出会う“発見型”の購買スタイルです。
特にTikTokでは、顧客の興味関心に基づいてAIがコンテンツを自動表示します。検索しなくても、自分に合ったブランドや商品の動画が流れてきて、思わず欲しくなってしまう──そんな体験が若年層を中心に急増しています。
この仕組みは、TikTokだけでなく、InstagramやYouTubeなど他のSNSにも広がっており、AIレコメンドによる「出会いの場」が購買のきっかけになりつつあります。これにより、あまり広告予算がない新興ブランドや知名度の低いブランドでも、多くの顧客に認知され、売上を伸ばすチャンスが生まれているのです。
こうした発見型購買を、どのようにブランドが活用すべきなのでしょうか。最大のポイントは、ブランド自身が直接顧客に発信するのではなく、インフルエンサーやクリエイターなど第三者が発信源となることです。つまり、ブランドが発信を“コントロールできない”というのが、この購買モデルの本質です。
そのため、ブランドはクリエイターとパートナーシップを築き、彼らの自然な投稿の中で商品が紹介されるように働きかける必要があります。もちろん、クリエイターとの連携にはブランドイメージを損なうリスクもあるため、慎重な運用が求められますが、成功すれば大きな売上インパクトを生み出せる可能性があります。
発見型購買は、いまやブランド戦略の新たな柱です。検索されるブランドから、“偶然出会われるブランド”への進化が求められています。
近年、顧客の購買行動は大きく変化しています。かつては「Googleで検索して比較し、購入する」という情報探索型の流れが主流でしたが、現在では、TikTokやInstagramなどのSNS、Amazon・楽天市場といったECモール、さらにはChatGPTやGoogleのAIレコメンドなど、顧客が商品と出会うチャネルが多様化しています。こうした変化の中で、ブランド担当者が考えるべき視点も、「どこで探されたか」から「どんな文脈で、どんな感情とともに出会われたか」へとシフトしてきました。

このような環境下では、今回紹介したように、購買行動を「ブランド計画購買」「カテゴリー計画購買」「非計画購買」の3タイプに分け、それぞれに最適なブランド戦略を設計することが重要です。これからのブランド戦略の起点は、「いつ・どこで買われたか」ではなく、「どんな状況・感情と結びついて想起されたか」。購買タイプごとの文脈設計の質こそが、売上成長の分かれ道になる時代なのです。