「買う理由」を提供するために動画を活用
続いて行われたのは、SUPER STUDIOの自社D2C事業でブランドマネージャーを務める一志邦仁夫氏による、(ふつうの)ショップの動画活用事例セッションだ。同ブランドは、有名レストランのシェフや料理人など、一流のプロが監修した高価格帯の調味料などを取り扱っている。

代替品が多い調味料の市場環境で、顧客に「買う理由」を提供するため、動画コンテンツの強化が必須だと一志氏は判断。一流のプロ監修というプロダクトの優位性や、受賞歴のあるデザインといったクリエイティブの世界観を、動画を活用して最大限に訴求することを目指した。
新規顧客獲得では「美味しそう」「試してみたい」という印象を与え、LTV向上では購入後の「満足感」を提供できるよう、シズル感や購入後の利用イメージを動画で伝えることにした。
ECサイトのCVRは4.1倍に、滞在時間も増加
動画ソリューションにはFireworkを活用。ECサイト上の様々な場所に設置できる点やライブ配信など様々な機能がそろっている点、フロントエンジニアの稼働が不要で開発リソースが取られない点などが導入背景にあったという。
Firework導入後は、サイトTOPや商品詳細ページに動画を設置して顧客の興味を引き、サイト滞在時間の伸長と利用イメージの喚起を図った。さらにレシピ一覧ページや詳細ページを新設してコンテンツを一箇所に集約し、回遊を促進することで、CVRや購入単価の向上を目指したのである。

また、定期顧客向けには、商品の活用促進や他商品の認知促進のため、メールやLINEのリッチメニューに動画やレシピの検索導線を導入した。ポップアップショップに出店した際もiPadで動画を接客に活用し、店頭でのCVR向上を図った。また、ライブ配信の視聴者限定でインセンティブを用意したところ、視聴者の7%が実際に来店し、インセンティブを利用していた。
サイト内の効果測定にはGA4を活用し、詳細なデータ分析を行っている。動画コンテンツ設置後、動画視聴ユーザーと非視聴ユーザーの比較において、ECサイト内でのCVRは4.1倍に向上し、平均セッション時間は4分15秒向上、平均遷移ページ数も1.5倍に増加など各数値で成果が出ている。どのレシピ動画が成果を出しているかもGA4で計測可能であり、施策の効果を定量的に可視化しているのである。
今後の展望として、動画コンテンツ強化の方針は変わらず、コンテンツの量産と質の向上を目指してPDCAを回していく。また、自社プロダクトである顧客データ基盤「ecforce cdp」を活用した詳細なデータ計測環境の整備を進め、顧客属性ごとの動画視聴傾向やLTVとの関連性を分析することで、点ではなく面で顧客を捉える環境を整える。
また、レシピとポイントプログラムの連携、インフルエンサーを活用したライブコマースの実施、そしてTikTok Shopのリリースに備えるなど、新たな展開も視野に入れている。