はじめに
皆さま、こんにちは。MMOL Holdings 代表の河野と申します。今回から始まる新連載「MMOL Holdings河野氏がホットなトピックに迫る! EC×AI活用最前線」では、EC(電子商取引)とAI(人工知能)にまつわる最新情報や事例、そしてこれからのビジネスチャンスについて、幅広い視点からお届けしていきます。
第1回となる本記事では、2025年のEC業界を取り巻く環境と、日本におけるAI活用の可能性について概観しながら「これからどんな進化が起こり得るのか?」を皆さまと一緒に考えてみたいと思います。
コロナ禍特需が終わり踊り場に 日本のEC化率はこれ以上伸びるのか
コロナ禍による急伸を経て、EC市場は今もなお成長基調にあります。一方で、日本におけるEC化率(売上全体に占めるECの割合)の引き上げには、やや限界が見え始めているのも事実です。
今や消費者にとって、ECの利便性は当たり前のものとなりつつあります。「とりあえずネットで探す」という行動様式は定着しましたが、その一方で“ECだからこそできる大きな変革”を打ち出せていない企業も多いのではないでしょうか。
2025年前後のEC業界は、いわば「さらなる上昇を前にした踊り場」のような状況に差し掛かっていると考えられます。コロナ禍以降に急成長を遂げたECサイトやデリバリー関連サービスは少なくありませんが、コスト構造やリソース不足の問題が浮き彫りになり始めた今、次のステージへ進むには根本的なビジネスモデルや運営体制の見直しが求められているのです。
部分最適では補えないリソース不足 次世代に向けた対策を考えよう
2023年の国内BtoC-ECにおけるEC化率は9.38%(出典:経済産業省「令和5年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」)で、前年比0.25ポイント増とほぼ横ばいの状態が続いています。BtoB-ECにおいても伸び率は鈍化しており、この状況から「一気に2桁成長」といった好転は当面望みにくいでしょう。市場の成長余地はありながらも、従来型の施策だけでは頭打ちで、2025年は各社の明暗を分ける年だといった指摘も多く存在します。
さらに深刻なのが、“次世代を担う人材不足”です。ECビジネスを支えるには、商品企画やマーケティング、物流・在庫管理、顧客対応など、多岐にわたるスキルと担当者が必要になります。しかし、業務量が増大する一方で、デジタル人材やデータサイエンティスト、さらには現場オペレーションを担うスタッフの確保が難しく、疲弊が進んでいる企業も少なくありません。
- フロント(顧客対応)からバックエンド(物流・在庫管理)に至るまで、人手不足が顕在化している
- デジタル人材・データ活用人材も圧倒的に不足している
こうした課題に対して「我が社ももっとDXだ」「最新のMA(マーケティングオートメーション)を使おう」と、ソリューションやツールを使って改善を図る企業も増えています。しかし、それだけでは根本的な解決にならないケースも多く存在します。なぜなら、本質的に必要なのは「コストカットのための部分最適」ではなく、「いかに限られたリソースを最大活用し、新しい価値を生み出せるか」という視点だからです。