あえて○○で配送 謎解きゲームなど展開の「第四境界」が物流で生む世界観
もちろん、既に自社の世界観を体現した配送用の箱、ラッピングなどを取り入れているブランドも多いだろう。顧客の購入費用に応じて、同梱物を使い分けるといった施策を行うケースも見受けられる。しかし、UGC創出をより促進するには、まだ工夫の余地がある。伊藤氏は「『他の顧客にも共有したい』と思ってもらうには、もう一歩踏み込まなければならない」と強調した。
たとえば、商品を届ける過程にストーリー性を持たせる施策が考えられる。具体的な事例として伊藤氏が挙げたのが、ARG(代替現実ゲーム)と呼ばれる作品を手掛けるクリエイター集団「第四境界」だ。2024年3月に活動を開始し、2025年4月時点でXのフォロワー数は約23万人にのぼる。
第四境界は、現実と仮想の間の曖昧な領域に物語を作っている。作品には、謎解きゲーム「人の財布」や「かがみの特殊少年更生施設」などがある。これらは、専用のゲーム機を必要とせず、既存のSNSやウェブサイト上で物語が進むのが特徴的だ。その世界に入ってゲームに参加するには、物語を進める上で鍵となる商品をECサイトで購入する必要がある。
新作「人の交換日記」は、“使用済み”の「交換日記 暁ヶ丘小学校 2010年」がフリマサイトで販売されているという設定だ。メルカリで2025年1月28日に先行販売されたが、即完売。その後の一般販売でも売り切れの状態が続いているという。

「第四境界とユーザーが現実で接点を持つのは、基本的にECサイトで購入した商品を受け取る瞬間のみです。実際に商品を受け取った際、あたかもフリマサイトで個人から購入した誰かの交換日記を手にしてしまった不思議な感覚になれるように、“届け方”にこだわっているのです。梱包資材や配送ラベル、自社ECサイトの商品詳細ページまでも、まるでフリマサイトで購入しているかのように演出し、世界観を醸し出しています」
こうした施策は「ゲームのようなエンターテインメント性の高い領域だからできること」と考えるかもしれない。しかし、仮に第四境界のような世界観ではなくても、物流がブランドの演出役を担える点は共通ではないだろうか。梱包材を広告として活用するなど、自ブランドに合った仕掛けをマーケティング部門と連携して検討するのも一つの手だ。