物流は単なるコストセンターか? “削減”だけでは競争に勝てない
梱包資材も含めて、物流領域はコスト削減の対象とされるケースが珍しくない。世界観を反映した梱包や同梱物の使い分けは、コストとの両立が難しいのも事実だ。また、フローが複雑化し配送ミスが発生する懸念もあるだろう。
一般的なやり方としては、EC事業者側が細かい条件を設定し、それに合わせて梱包の仕様や同梱物を変更する。伊藤氏は「中にはEC担当者の人員・工数をかけずに行いたいという事業者もいるが、実現は容易ではない」と話す。
「EC運営業務の多くがオンライン上で行える一方で、物流はリアルな作業です。すべての関係者に明確な指示を出す必要があります。そうでなければ、認識の齟齬が発生し、商品や配送先の間違いが発生してしまうでしょう」
たとえば、5,000円以上購入している顧客、キャンペーン対象商品を購入している顧客、新規顧客など、条件を満たしている顧客の抽出はEC事業者側の作業だ。多くの場合、これらの要素をCSVに抽出しなければならない。
キャンペーン対象人数に比例して、どうしても作業は増える。こうした状況でも、伊藤氏は「物流に対する視点を変える必要がある」と指摘する。
「倉庫の保管料や作業費用、配送コストといった『見えるコスト』にとらわれて、全体コストの最適化に目が向いていないEC事業者は多いです。仮にコスト削減には成功しても『物流事業者が柔軟かつ細かな対応までしてくれず、計画していた施策が実行できない』となっては本末転倒です。
運賃などが高騰している中、物流コストを無理にカットするのは健全ではありません。むしろ、売上につなげるためのマーケティングに活用すべきです。今一度、どのようなツールがあれば実現できるのか。それを活用している物流事業者がいないのか、念入りに調査してみてください」
顧客満足度を上げる物流施策、業務効率化の双方を実現するには、各顧客の条件に合わせた細かい対応などを一元管理・自動化できるシステム、多様な要件に対応できる物流オペレーション、豊富な知識を持つ物流事業者をパートナーに選ぶ必要があるだろう。昨今は、既に物流側でも一部の業務を自動化・柔軟化できる仕組みが登場し始めた。
「今後、物流はより重要な要素となるはずです。物流事業者との密なコミュニケーション、定期的な市場調査をおすすめします。どのようなブランドだとしても、物流を、ブランドストーリーを彩る大切な要素と位置付ける考え方が重要です」