リニューアル後の発見 ○○な顧客はLTVが高い
PLAZAでは、2023年から約2年かけて、自社ECサイトのカートシステムを移行した。プロジェクトの初期から対応してきた中野氏は、システム部門との連携に苦労したという。
「『こんな自社ECサイトにしたい』という理想はたくさんありましたが、いざ実装してみると、思うようには機能しません。私はIT出身ではないため、専門用語の理解から始める必要がありました」(中野氏)
中野氏は、システム部門と何度も対話を重ねながら、設計書のレビューや仕様のすり合わせを丁寧に行っていった。特に大きな変化として挙げられるのが、アクセス集中時の安定稼働だ。
たとえば、人気キャラクターの限定商品を発売すると、実店舗だけでなく自社ECサイトにもファンが押しかける。過去には、アクセスに耐え切れずサーバーがダウンするケースもあった。リニューアル後の自社ECサイトでは、キャパシティが拡大。販売機会の損失を防ぐことで、売上が大きく伸びる日が増えている。
加えて、顧客の行動データが可視化された。これにより、中野氏は「新たな発見があった」と話す。
「PLAZA全体の売上を見ると、化粧品の比率が高いです。しかし、自社ECサイト内の検索では、キャラクターグッズに関するキーワードが多く入力されていました。分析した結果、化粧品を探すお客様は、Googleをはじめ外部検索を経由して商品詳細ページに遷移しているとわかりました。それに対してキャラクターグッズの場合は、まず自社ECサイトに訪れてから商品を探すお客様が多いのです。お客様がどこから訪れ、何に関心をもっているのかが定量的に見えるようになったことで、より精度の高い施策の設計が可能となりました」(中野氏)
また、新サイトでは顧客体験を高めるコンテンツの拡充も進行中だ。スタッフによる商品レビューやスタイリング投稿、Instagramの投稿といったUGCの活用が行われている。今後は特集記事など、トレンドを押さえているPLAZAだから作れるコンテンツを創出していく方針だという。


「過去の自社ECサイトでは、新商品を並べておくだけになりがちでした。これからは、“PLAZAで見る・買う理由”を作っていきたいです」(中野氏)
新たな価値を発信しているPLAZAの自社ECサイトだが、リニューアルからまだ半年ほどしか経っていない。岡芹氏は「現時点で“箱”を整えた段階」と語る。この先の成長の鍵となるのは実店舗との相乗効果だ。
「新たに得られたデータによると、実店舗と自社ECサイトの両方を利用しているお客様のほうが、LTVが3倍高くなっています。つまり、当社の主軸である実店舗の売上を、自社ECサイトがさらに後押しできるということです。この事実を社内全体に伝えていきます」(岡芹氏)
実店舗との相乗効果を高めるため、PLAZAでは「店舗受取サービス」の導入も進めている。顧客の買い回りや実店舗への来店動機を創出し、OMO化を引っ張っていく。
「他社でも同様の取り組みはあります。PLAZAらしさをどう届けていくかが、次のフェーズの課題です。まずは実店舗との連携サービスを始め、+αの付加価値を探っていきます」(中野氏)
「さらに、ギフトはオンライン・オフラインで共通した注力ポイントだと思います。近年は、ソーシャルギフトのように、オンラインで気軽にプレゼントを贈れるようになりました。この流れを活用すれば、実店舗と自社ECサイトの併用を自然に促す施策が生まれるはずです。そうした仕組み作りを通じて、“お客様の心拍数を上げる体験”を提供していきたいですね」(岡芹氏)