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ECzine Day 2025 June【オンライン+スタジオ観覧型イベント】

2025年6月12日(木)10:00~17:25

300Bridge代表 藤原義昭氏と探る 小売×デジタルの次なる転換点

デジタル広告投資から見えた「北欧、暮らしの道具店」の新たな成長戦略 クラシコム×AI活用の未来は?

結果は増収減益、でも新たな成長戦略が見えた プロモーション施策の挑戦

藤原(300Bridge) 視点を変えて直近のビジネスもしたいのですが、株式上場すると、きっと従来のフォームを変えなければならないこともありますよね。何かやってみて得た手応えなどがあれば、お聞かせください。

青木(クラシコム) 直近(2025年7月期第2四半期)の連結業績について、「増収減益」というワードをニュースで見て気になっている方がいらっしゃるかもしれません。クラシコムの歴史の中でも初めてのことなので、少し背景をお話したいなと思います。

 実はこの結果は、今期からの成長戦略に向けて広告費を大きく増やすという先行投資的な判断によるものです。2024年の第4四半期に、デジタル広告の可能性を試すべく、広告予算をこれまでの約2倍に拡大し、マーケティングの新たなケイパビリティを獲得できるかどうか、実験的な取り組みを行いました

 その結果、広告費を増やしても効率が大きく悪化することはなく、むしろ今までは難しいと思っていた“広告運用における「量」と「質」の両立”が見えてきたのです。これにより、これまでの「北欧、暮らしの道具店」のノーペイド中心の取り組みに、ペイドのプロモーションをミルフィーユ状に重ねていく新たな成長戦略の輪郭がはっきりしてきました。

 スマホアプリのダウンロード数も過去にない伸び方を見せ、「手応えがあった」と素直に感じています。もちろん投資的な評価が分かれることは覚悟していましたが、今回の取り組みによって、次に何をすべきかが明確になりました。

 こうした背景から、今期は2年間を見据えた成長加速のための先行投資期間と位置づけ、広告費を引き続き増加させていく方針です。その結果として、増収でありながらも利益は一時的に減少していますが、中長期的な成長のための重要な一歩と考えています。

青木氏と藤原氏

藤原(300Bridge) 小売業にありがちな「プロパーで売れないからセールをして粗利が下がった」という話ではなく攻めの投資ですから、経営者の判断としては適切だと思います。

青木(クラシコム) 率直にお伝えすると、今のクラシコムは売上はまだ増やせるけれど、人数はそこまで増やさなくていい、つまり人件費がそこまで上がらないフェーズに入っています。実際、上場してからの採用は年間5名ほどです。

 一方でオリジナル商品の比率が上がり、粗利は増え続けています。それにも関わらず、広告への投資額を積極的には増やしていなかったので、販管費率が年々下がっている状況でした。であれば「広告費比率を高めたら、より事業規模を拡大できるのでは?」と仮説立て、収益管理指標としての広告費比率を固定的に管理するのではなく、EBITDAマージンの目標を定め、その範囲内で機動的に広告費を運用する方法に切り替えてみています。こうすれば、広告投資の可能性が広がりますし、持続的な成長につながる新たな視点を得られると考えました。

 ただし、広告費を使って売上につながるコンバージョンを得ようとすると「売上を減らせないから広告も止められない」といった悪循環になりかねません。クラシコムではそれを避けるため、スマホアプリのダウンロード促進を主な訴求軸としています。すると、投資対象が商品売上そのものではなく、売上につながる“エンゲージメントの強化”になるため、広告出稿量を絞ってもただちに売上に大きなインパクトが発生しにくいですし、ロイヤルユーザー獲得の間口を拡大できます。

藤原(300Bridge) 論理としては成り立っていますが、この話を真に受けて他社が実践するのは危険ですね。オリジナル商品がしっかり売れている、かつ顧客とのエンゲージメント基盤があるクラシコムだからこそ、広告投資に複利効果が生まれているのだと感じました。

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願望をもたない“AI部下”をどう操るか 管理に必要なのは○○力

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この記事の著者

岩崎史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://eczine.jp/article/detail/16474 2025/05/08 07:00

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