消費期限は3日 物流の壁を乗り越えEC強化を目指す
2019年、弁才天は愛知県・名古屋市の高級住宅街として知られる覚王山で創業した。看板商品のフルーツ大福には、毎朝市場で仕入れた季節の果物を使用。あえて甘さ控えめな白餡と求肥で、果物本来の味を引き立たせている。代表の水鳥氏は「果物自体の美味しさが1番の魅力」と語る。
「人気商品のいちご大福は1個780円、温州みかん大福は1個800円と、他社のフルーツ大福と比べると高額です。高級感があり、多くのお客様が手土産や自分へのご褒美として購入します。日常的に購入されやすい商品ではありませんが、それでもリピート率は50%と高いです」
弁才天の知名度を大きく押し上げたのが、SNSによる拡散だ。インフルエンサーや一般ユーザーが商品の断面を撮影・投稿し、人々の目にとまった。
「大福には細い糸をつけています。食べる際に切るためのものです。自分で断面を作る楽しさや動きが加わった点が、世の中のニーズに合致したのではないでしょうか」
現在、弁才天の売上の約90%は実店舗経由となっている。同社はフランチャイズで全国に店舗数を拡大した。しかし、地域によっては購入できない顧客もいることから、2020年に自社ECサイトを立ち上げたという。2024年のEC売上実績は、繁忙期で月商1,000万円、平常時で500万円前後。水鳥氏は「まだまだ伸びる市場。投資を含めてEC事業の強化を図りたい」と意気込む。
ここで立ちはだかるのが物流の壁だ。弁才天の商品は、作った日を含めて消費期限が3日と短い。そのため以前は、南は沖縄本島、北は北海道の一部地域までしか届けられなかった。また、デリケートな商品のため配送時に形が崩れるケースも珍しくなく、緩衝材にも気を遣わなければならない。EC経由で商品を販売するには、ハードルが高いといえる。
「中には、届いた日が消費期限となる地域もあります。そこで、一部商品を生のままではなく冷凍でも配送できるよう、約3年かけて商品開発を続けました。結果的に、冷凍商品は消費期限の延長に成功しています。加えて、緩衝材にもこだわるなど弱みを一つずつ克服している段階です。
今のところ、自社ECサイトではまだ多くのお客様が生の大福を購入する傾向があります。一方で、2024年9月に出品を開始したAmazonでは、注文の大半が冷凍商品です。ECチャネルによって、顧客層の違いを実感しています」