『LEON』のもう一つの顔=究極のマーケティング雑誌
──雑誌『LEON』とは、どのようなメディアなのでしょうか。
渡辺 LEONは、40代~50代の富裕層向けに発刊しているラグジュアリーライフスタイル雑誌です。そのテーマの一つには「いわゆる”オヤジ世代”の活発な消費によって、経済を盛り上げよう」があります。
日本では「親父」「おっさん」という単語のイメージから、歳をとる=悪いことのように感じる人が少なくありません。しかし、オヤジこそ日本を支えているのではないでしょうか。LEONは、そんな歳をとってもかっこいいオヤジ像を生み出し続けてきました。読者に楽しんでもらうための洋服や時計、ジュエリー、車をコンテンツ化して掲載し、リアリティが感じられるシーンを届けています。
ただし、それは表面的なブランドイメージにすぎません。たとえば、車に乗る際に似合うコーディネートを「転がしオヤジの着こなし」と伝えると、実際に着るイメージが生まれますよね。結果的に、その商品が売れるわけです。つまり、LEONの本質は“究極のマーケティング雑誌”だといえます。
従来、当社のような出版社や雑誌が提供するのは「読んで知る」までの体験でした。しかし、今後はEC事業によって「買う」という行動に至るまで、LEONとともに体験してほしいと思っています。その手段が、2017年にスタートした「買えるLEON」です。
──読者に新たな価値を提供するにあたって、なぜEC事業を選択したのでしょうか。
渡辺 最初のきっかけは、広告代理店と制作会社からの持ち込み企画です。当時は社内に知見がなかったため、広告代理店らがEC運営を行い、当社が掲載コンテンツを作っていました。10アイテムから販売を開始したところ反響があったため、商品や買えるLEONの企画を拡充していったのです。
そんな中、当社にとって次なるビジネスの可能性を探るタイミングが訪れました。2020年頃から始まったコロナ禍です。本格的にEC事業へ注力するため、広告代理店・制作会社との契約を解消して、EC運営の内製化へ動き出しました。
渡辺 私は、入社以来ずっと編集畑でしたが、2018年からは編集の傍らEC運営も担当しています。担当になって初年度の売上は前年比240%、翌年は140%、その翌年は120%と、成長率は緩やかになっているものの、継続的に事業規模を拡大しています。アパレル企業でEC運営や営業、宣伝販促の経験をもつ玉田(恵子氏)が仲間入りした2024年度は、EC売上が5億円を超える見込みです。
高額商品が多い点が買えるLEONの特徴ですが、特に高いものではアパレルブランド「muta MARINE」、スポーツボートを販売する「CENTURION BOATS」とコラボレーションした約4,000万円の特注ボートを販売しています。「こんなに高い商品をECサイトで購入するのだろうか」と思うかもしれませんが、この2年で3艇も注文が入っており、運営している私も驚きました。