前編はこちら
売上伸長は優先しない 「無茶しないけど便利」でゆるくつながる新定期便
高松(フロアスタンダード) 前編ではブランドや自社EC立ち上げのストーリーを中心にお聞きしましたが、ここからは定期便について聞かせてください。木村石鹸さんは、ECサイトでの定期便運営をどのような位置付けで考え、どういったポリシーをお持ちなのでしょうか?
木村(木村石鹸) Shopifyでの定期便運営は、「メンバーシッププログラムやファンコミュニティに近いものにしたい」という思いがあります。
定期便のメリットは「買い忘れがない」「少し安い」といったものが主だと思うのですが、木村石鹸としてはメンバーシップを通して当社と関わりを持つことができ、商品以外の楽しさを受け取れるようなプログラムにしたいと考えています。そのため、「開発者のインタビュー動画をプレゼントします」「新しい商品のサンプルが優先的にもらえます」といったような、愛着やつながりがより強固なものになる形を実現しようとしているところです。
高松(フロアスタンダード) 定期便自体は移行前のカートでも行われていましたが、仕組みや運営方法そのものを一新しようという意図もあるのでしょうか?
木村(木村石鹸) それよりは、利便性向上が目的ですね。以前のカートでは、会員登録をしていても定期便を申し込む際に再度登録をしなければならない不便さがありました。また、システム上定期便で提供している商品しかお客様に発送できませんでしたが、リニューアル後は定期便発送のタイミングで別の商品も一緒に注文できるように機能を拡張しています。ベースとなる機能は変えずに不便さを解消して、より便利に定期便を利用していただけるように意識して設計を行いました。
高松(フロアスタンダード) 定期便は、経営目線で見るとLTVが伸びて事業計画が作りやすいといったメリットがありますよね。そういった点は重要視してないのでしょうか?
木村(木村石鹸) まったく見ていないわけではないですが、そこまで厳密にLTVを測るようなことはしていません。直近1年で定期便を継続されているお客様がどれだけいて、どれほどの売上を見込めるかといった予測はできるようになりましたが、この数字を増やすために無茶な施策をするべきではないと思っています。
実際、現在定期便を続けてくれているのは、勧誘などをせずに付いたお客様です。LTVを目標にすると判断基準やアプローチが変わり、こうしたお客様の受け止め方や継続してくれる方の数が変わってしまうのではないかと思っています。
僕は、ナチュラルに定期便を利用して「木村石鹸のコミュニティに関わりたい」と思う人が増えてくれれば良いなといった感覚でいます。もちろん売上目標は存在しますが、売上はあくまで「結果」です。売上を達成できるか否かよりも、売上を上げるための活動ができているかどうかのほうが重要だと思っています。