CRM視点を入れた動画配信が増加 広告獲得→育成視点が鍵に
縦型動画、ショート動画の広がりにより、私たちの生活に「スマートフォンで動画を閲覧する」という文化は、もはや定着したといっても良いだろう。この習慣化を踏まえてか、「動画を使ったCRM施策や、コンテンツ設計の相談が増えている実感がある」と久保田氏は説明する。
「顧客が初回購入したり関心を抱いたりした際に、LINE公式アカウントへの登録を促すブランドは以前より多く存在しますが、中にはLINE向けMAツール『Lステップ』を活用する方もいるでしょう。特に検討期間や次回購入までの周期が長い商材を扱うブランドでは、友だち登録してもらい、継続的にコミュニケーションを図る手段として、商品知識や使い方などの教育・育成コンテンツを動画で配信するケースが増えています」
コロナ禍を経て、EC進出する事業者が増える中、新規顧客の刈り取り合戦はより一層熾烈なものとなっている。広告による顧客獲得単価も上昇傾向にあることから、限られた予算で得たチャンスをものにするため、中長期的な付き合いを実現する「顧客育成」の考えも徐々に浸透しつつあるといえるだろう。
「広告はあくまで出会いのきっかけです。そこから、友人・知人のように長く付き合える関係を構築しようとするのなら、顧客に継続的なメリットを与え続ける必要があります。購入によって金銭を払ってもらう以上の対価をお返しするのに適切なのが、顧客の知らない知識や情報を伝えるコンテンツです。
適切なチャネルやアプローチ方法は、商材や顧客層によって変化しますが、広告で獲得してコンテンツで育成するPDCAサイクルを意識するのが成功への近道だといえます」
あくまで既存顧客に向けたコンテンツだが、その置き場をSNSとする場合、上手に活用すれば新たな顧客との出会いにつながる可能性もある。「バズり」を得る目的の動画とは異なるが、「場のお作法」的なものを押さえてより多くの顧客の心を捉えようとするのも一つの手だ。
「TikTokは特にこのあたりのTips提供に熱心で、ユーザーペルソナをまとめた白書や成功するクリエイティブ制作に役立つフレームワークなど、多くの資料が配布されています。広告出稿の有無に関わらず、効果的な動画制作のヒントが紛れていることもありますので、積極的に取り入れてみると良いでしょう。やみくもに思いついたアイデアを形にするよりも、成功確率を上げられるはずです」