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多様なクリエイター獲得を目指すTikTok
TikTokの台頭により、この数年勢いを増している縦型動画市場。2023年5月には、GoogleがYouTube ショートで認知目的の広告配信を可能にするなど、露出できる場所も拡大傾向にある。サイバーエージェントが2024年2月に発表した「2023年国内動画広告の市場調査」でも次のように言及されており、注目度がうかがえる。
大手SNSや動画配信サイトでは、縦型ショート動画コンテンツの視聴時間が急速に増加し、世代を超えた支持を受けつつあり、生活者の消費行動にも影響を及ぼす傾向が見受けられます。これを受けて、広告主企業による縦型動画を介したコミュニケーション需要が急増し、2023年の縦型動画広告の市場規模は昨年対比156.3%の526億円に達しました。
「YouTubeアプリを開いても、今はトップ画面の比較的上部にショートのコーナーが設けられています。Instagramでも『発見タブ』に動画や動画広告が表出するようになっており、どちらのSNSもTikTokを意識せざるを得ない状況になっているのでしょう。当社にも、縦型動画のフォーマットを意識した依頼や相談は増えています」
各プラットフォームが対抗意識を燃やすTikTokも、今や「短尺動画」にとどまらず多様なフォーマットの動画が集まるSNSへと進化を遂げている。動画の長さの上限は、2022年2月に10分へ延長されているが、2024年1月にはこれを30分にするテストの実施が明らかとなった。
「TikTokが長尺化を狙うのは、クリエイターの獲得が目的と見られます。たとえば、専門知識や説明が必要となる難解なトピックを発信する方は、これまで長尺動画がアップできるYouTubeを情報発信の拠点とし、TikTokやInstagramをフォロワー数増加や露出強化のチャネルとして活用していました。
発信者視点では、このままでもよいかもしれませんが、プラットフォーマー目線で考えると、自社のプラットフォーム内で完結するクリエイターが増えたほうが、ユーザーデータの精度向上や広告収入増につながります。利用者が若者だけでなく、30代・40代などに広がりつつあることも、長尺化に関係しているでしょう。これからは、TikTokも濃厚な情報が届けられる場へ進化していくはずです」
久保田氏は、この流れでPinterestの存在感が増していることについても触れた。初期のPinterestを知っている人からすれば「静止画をピン(保存)できるサービス」という印象が強いかもしれないが、近年は動画もピンできるようになっている。
「Pinterestは、アパレル、コスメ、インテリアなど、ビジュアル特化型の訴求をしたいブランドにとっては、ポテンシャルが高い広告媒体だといえます。ショッピングアド機能もあるため、EC売上アップを目指す方は注目しておくとよいでしょう」