AIの答えが「正解」かを判断するのは人 求められる二つの力とは
前出の話からもわかるように、今後は指示に対するアウトプットの要素、つまり情報量が少ない表現手段からAIに置き換わっていくことが予想される。この考えを踏まえると、テキストや静止画よりも多くの構成要素を含む動画は今すぐに代替されるわけではないが、「気づいたら自分の仕事をすべてAIができるようになってしまっていた」といったことがないよう、スキルアップを図らなければならない。
「これからの人間に求められるのは『俯瞰力』と『判断力』だといえます。これからが身についた上でAIを使えるようになれば、人材として大きな価値が見出せるはずです。
ブランドで広告出稿をするのであれば、生成AIにレギュレーションなどを言語化して指示した上で、得られたアウトプットが世の中的にふさわしいものなのか。ブランドの歴史や今後の戦略を踏まえた上で、適切なものなのか。こうした総合的な判断は、ブランドごとに解が異なるため、AIが高い確率で正解を出せるようになるにはまだ時間がかかります。
もちろん、自分の頭で最適解を想像できるようにならなければこうした力は身につかないため、キャリアの初期に一定期間『コピーを書きまくる』『要望に合致する画像素材を探す』といった経験を積むのは必要です。これらをすっ飛ばして、俯瞰して適切な判断ができるようにはなりません」
また、AIが勝ちパターンを提示し、私たちは「ジャッジを下す側」になったとしても、施策のマンネリ化からの脱却やブランドイメージを一新したい際など、過去のデータだけでは判断ができないケースもあるだろう。こうした時こそ、AIの意見を踏まえた上で人間が判断を下す腕の見せどころだといえる。
「特に少人数で動画制作や広告運用をしている場合は、王道も変化球も……と欲張った結果、どちらも中途半端になるケースが少なくありません。人の頭脳を使ってひねり出すべき要所にリソースを割くために、AIで時短を図る。王道施策はAIのいうことに従ってみて、それらが行き詰まった際に飛び道具的なアイデアを人間が出していく。こうした役割分担も大事です」