大都市・地方都市間の差を埋めるには 考えられる3つの施策
人口が多いとなぜEC化率が高いのか。その具体的な要因について「消費の刺激」をキーワードに、私は次の3つの仮説を挙げます。
(1)実店舗からの刺激がEC利用を促進?
データからもわかるように、大都市圏は地方都市よりも実店舗が充実しています。そのため、消費者はたまたま入った実店舗で新しい商品に出会うなど、日常生活の中で刺激を受ける機会が比較的多いと考えられます。これにより、購買意欲が旺盛となり、その波及効果がEC利用にも表れているのではないでしょうか。
(2)SNSのつながりの多さが情報量に比例
人口が多い分、SNSでつながっている平均人数は大都市圏の消費者のほうが多くなりやすいと私は推測しています。デジタルを通じたつながりが多いほど、得られる情報も増えるはずです。それがEC利用に結びつくケースは少なくないでしょう。
(3)賃金の差が消費の差に
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、最も月給が高いのは東京都で36.85万円、次いで神奈川県の35.04万円、大阪府の34.0万円となっています。大都市圏ほど給与は高い傾向にあり、必然的に可処分所得も高くなります。これが消費の刺激につながっており、お金にゆとりがある分EC利用にも消費の意欲が向いているといえます。
こうした大都市・地方都市間の差を乗り越える簡単な方法はありません。しかし、次の点が攻略の糸口となるのではないでしょうか。
リアル接点が少ない分オンラインで 基本に忠実な施策を
結果を出すのに近道はありません。丁寧なコンテンツ作りや顧客との適切なコミュニケーションなど、「基本に忠実」が重要です。利用する実店舗の種類が大都市圏より少ない地方においては、特にSNSなどオンラインチャネルを通じた情報・コンテンツの発信とコミュニケーションが求められるでしょう。こうした施策は、意外と見落とされています。今一度足元の状況を見直してみてください。
ECにもエリアマーケティングは不可欠
たとえば、海外ブランドが最初に日本に出店する場所は、必ずといって良いほど東京都です。その分、大都市在住の消費者はトレンドを追いやすいのではないでしょうか。また、寒い地域と暖かい地域ではアパレルに求める機能が異なるなど、エリアによって様々な違いがあります。それぞれの特徴を理解した上でアプローチする、いわゆる「エリアマーケティング」を、ECにも応用しなければなりません。
購買データやウェブサイトへのアクセスデータを細かく分析すると、消費の地域特性が見えてくるはずです。ターゲットとするエリアの消費者を丁寧に分析し、需要に合った施策を実行してみるのも一つの手です。
実店舗との連携の可能性
米国の事例ですが、現在「SHEIN」で購入した一部商品の返品店手続きが「FOREVER 21」の実店舗で可能となっています。このように、EC事業者が特定の実店舗と連携することで、地方における買い物の選択肢を広げられるはずです。地方都市でも大型商業施設が無くなることはあまり考えられません。そうした小売店がFOREVER 21のようなプラットフォーム戦略を採用するハードルはありますが、方法を探る価値はあるのではないでしょうか。