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1994年から2021年までに実店舗は約4割減少 EC利用への影響は
消費者のリアル回帰によって、実店舗の売上が好調な様子です。そうした背景もあって、EC業界ではオムニチャネルやOMOのように実店舗との連携が重要視されています。ところが、長期トレンドを見ると実店舗(事業所)の数は減少傾向にあります。総務省統計局の「経済センサス‐活動調査」によれば、1994年時点の小売業の事業所数は149万9,948所である一方、直近公開分の2021年は88万31所と、約4割も減少していました。
ただし、これを法人と個人事業主に分解すると、状況が異なることがわかります。法人の事業所数は約60万所でほぼ横ばいなのに対して、個人事業主では約90万から3分の1の約30万所にまで減っています。つまり、個人事業主が次々と実店舗の閉鎖や廃業に追い込まれたということです。今後もこの状況は続くと考えられます。
このデータを見て「法人の小売業は安定しているから今後も心配ないだろう」と思うかもしれません。しかし、経年推移を都道府県別で調べてみると、そうとも言い切れないのです。
次の表を見てください。1994年から2021年にかけて、法人の小売業の事業所数が最も減少したのは北海道の−14.4%であり、次いで香川県の−13.3%、秋田県の−12.7%となっています。減少率の高い順に並べてみると、東北地方、中国地方、四国地方が目立ちます。合計すると法人の小売業の事業所数に大きな変化はありませんが、地域ごとにその様相は異なるということです。
現在、日本は人手不足に陥っています。そのため、私は将来的に法人か個人事業主かを問わず、人手不足により小売業の事業所数がさらに減少すると考えています。
東京都、愛知県(名古屋市)、大阪府といった大都市は、人口が集中しているため実店舗が減る可能性は低いでしょう。一方で、地方都市は人口減少には抗えず実店舗が徐々に少なくなると予測できます。こうした状況から「地方都市在住の消費者は、今まで以上に買い物をECに依存するようになるのではないか」と予想する人も多いのではないでしょうか。
ところが、都道府県別に消費者のEC化率を独自算出してみたところ、意外とも思える結果が得られました。次のページで詳細を見ていきましょう。