GPT、Gemini、Claude 自社との相性が良いのはどれか
生成AIの特色をつかんだものの、既に複数のモデルが存在し「どれを使えばいいのかわからない」と悩む人もいるのではないだろうか。こうした人々に対し、ハヤカワ氏は「無料版でもできることは様々あるため、まずは気になるツールやモデルから触れてみて、強みや特徴、相性の良さを理解していくのが大事」とアドバイスをした。利用用途にもよるが、初心者の利用であれば各モデルに天と地ほどの大きな差はないのが現状だという。
ハヤカワ氏は、代表的な生成AIツールとしてOpenAIが提供する「ChatGPT」、Googleが提供する「Gemini」、Anthropicが提供する「Claude」の三つを挙げた。「Google製品との統合を視野に入れるのであればGemini、長文のテキストなど文字情報を主に処理するのであればClaudeが強いといったようにそれぞれの特色はある」とのことなので、まずは触ってみるところから始めると良いだろう。有償版に切り替える際も、各ツールの予算感はほとんど変わらないため、乗り換えのハードルもそこまで高くはないはずだ。
生成AI活用はリスクしかないのか 押さえておきたい回避の術
しかし、いざ「生成AIを業務に取り入れよう」となった際に、前出のハルシネーションのようなリスクとどう向き合うかが課題になるケースも少なくない。実際に、ハヤカワ氏が事業会社で導入推進を行う中でも「リスクに過敏な人は一定数存在する」という。こうした抵抗勢力に対して理解を促進するために「リスクの可視化と、適切な使い方ができる環境の整備は必要」とハヤカワ氏は補足する。
「現状、生成AIのリスクは『誤情報』『偏見や差別』『権利侵害』『セキュリティとプライバシー』『倫理』『悪用・乱用』の大きく六つに分けられます。これらすべてを完全に解消するのは難しいですが、回避する術は存在します」
たとえば、社内活用で支障をきたす誤情報を生成させないようにするには、RAG(検索拡張生成)の活用が有効だ。LLMの生成に、自社データなど正確性を補強するデータを追加すれば、回答の精度や信頼性を高められる。
「出荷期限までに在庫がさばききれない商品を正確に割り出したいのであれば、期日や在庫数が記載された自社のSKUデータを追加すると良いでしょう。すると、生成AIがそれらを基に予想在庫数を割り出してくれます」
また、権利侵害やセキュリティとプライバシー、倫理、悪用・乱用といった社会的リスクについては、生成AIを提供する側が解消に向けた工夫を行っているケースもある。わかりやすいのは、Adobeが提供する「Adobe Firefly」の例だろう。同社は、自社が提供するストックフォトサービス「Adobe Stock」やオープンライセンス、著作権が切れたコンテンツといったように、権利をクリアした画像を学習データとして用いることで、リスクの低減を図っている。
なお、セキュリティとプライバシーについては、Google Workspace上でGoogleドキュメントなどと同じように公開範囲を決めて利用できるGeminiの例が既に存在する。こうした個別最適に対応する術はツールごとに異なるため、業務活用時にはこうしたルールの確認も必要だ。加えて、自社で働く人々が生成AIの成果物を悪用・乱用しないような規則の整備など、組織ガバナンスの強化も欠かせない。
「『生成AIは、大学生のインターンである』と捉えると、わかりやすいのではないでしょうか。学生にいきなり業務を任せても知らないことが多すぎますし、間違った進め方をする可能性もあるため、目的や業務遂行に必要な情報や物資の在りかを教え、同時に目指すアウトプットや行ってはいけないことを明示するはずです。それと同様に、生成AIに必要な情報を適切に与えたり、使う側に円滑に運用するためのルールを設定したりといった環境整備が必要になります。また、『わからないことは質問して』というプロンプトにするのもお勧めです」