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ECzine Day 2024 Autumn

2024年8月27日(火)10:00~19:15

AIとの融合で広がるEC業界の可能性

模倣できない価値創出を ニューバランス鈴木氏・ビービット藤井氏と考えるAI時代のCXとクリエイティブ

 近年、あらゆる場面で耳にする機会が増えた「AI」。そのポテンシャルに目を向け、世界規模で様々な角度からデータ活用や業務改善などのアップデートが進んでいますが、日本ではどうでしょうか。「なんだかよくわからなくてまだちょっと怖い」という方は、ぜひこの連載から学び、前に進むヒントを得ましょう。第3回は、株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクターの鈴木健氏と、株式会社ビービット 執行役員CCOの藤井保文氏が「ブランド価値を向上させる顧客体験とAI活用のあり方」について語り合いました。

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生産性向上の話ばかりはつまらない ブランドの理想を具現化するには

藤井(ビービット) 鈴木さんとの出会いは13年前ほど前でしょうか。『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』(日経BP)を出版した際に感想をいただくなど、長らく交流がありますが、お会いするのは久しぶりですね。

 私は、鈴木さんのインタビュー記事などを拝見して逐一お考えには触れていたのですが、やはり「顧客体験」を重視していることがうかがえます。確か、著書の感想をいただいた際にも意見を交わした記憶があるのですが、今はどのようなことを考えられていますか?

鈴木(ニューバランスジャパン) ニューバランスに入社して15年たちますが、ブランドマネジメントに携わる私にとって「顧客体験」は非常に価値のある大事な要素です。ただし、営業部門のもつ指標との間に温度差があることと、顧客体験の有用性を示し、全社に浸透させるにはまだ時間を要する点が課題だと感じています。

 たとえば、シューズのフィッティングやアドバイスは顧客体験の向上に貢献するため、その場で購入いただけなくても、店舗では「価値のある接客」だと捉えられています。しかし「購入」や「売上の最大化・効率化」に軸足を置き、コールセンターのように費用対効果で接客時間を計ってしまうと、「効率が悪い」といわれかねません。

株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクター 鈴木健氏
株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 ディレクター 鈴木健氏

藤井(ビービット) 確かに世の中のデジタル化が進んで、数字を基にした施策の効果検証はしやすくなりました。一方で、数字にとらわれると直接効果が出る施策以外は軽んじられてしまいかねないのは、課題ですよね。

鈴木(ニューバランスジャパン) そうなんです。先ほどのフィッティングやアドバイスの例でいうと、その場で買ってもらえなくても、プロセスの中で顧客に「気づき」や「学び」を与えたり、顧客の悩みから店舗側に「発見」があったりすれば、事業に役立つため意味があるはずです。今はものが自然に売れる時代ではなくなっていることも踏まえると、ブランドの価値を見いだした体験作りが重要だと、私は考えています。

藤井(ビービット) 鈴木さんはマーケティング部の所属ですが、店舗とeコマースどちらの顧客体験構築にも携わっているのでしょうか。

鈴木(ニューバランスジャパン) 3年ほど前、どちらも見ていた時期があったのですが、今は営業部門がECチャネルを担当しています。

 もちろん、ものを売るにはマーケティングとの密接な連携が必要なため、相互で情報交換をしながら施策などは進めていますが、マーケティング部門は単にコマーシャル活動をするだけでなく、ブランドの理想形を具現化するために顧客体験を考え、実行するのが命題です。ECチャネルも見ていたときは、自分でも効率重視になりがちなところがあったので、どちらもバランス良く行うのは難しいなと思ったところはあります。

藤井(ビービット) つまり、今はブランドとしての顧客体験を考えることに集中できているというわけでしょうか。

鈴木(ニューバランスジャパン) とはいえ、やはりせめぎあいはありますよ。店舗でリッチな体験を提供しようと思っても、単に時間をかければ良いものではないですし、店舗には物理的制約が存在します。逆に、フィッティングなど店舗では自然にできるコミュニケーションが、eコマースではスムーズに提供できないといったようにお互い過不足があるので、その中でトータルの体験を高めるために何をすべきか常に考えています。それをいろいろな人に考えてほしくて、顧客体験の話をしているところはありますね。

藤井(ビービット) そういった命題をもつ鈴木さんは、今の世の中のAIブームをどう捉えていますか?

鈴木(ニューバランスジャパン) AIで生産性を上げる話をしている人が多く、個人的にはちょっとつまらないなと思っています。私としては、コミュニケーションへのフィードバックなどに興味があり、もっとブランド側の体験として意味があり、価値になることに使えないか考えたいですね。

 それを実現するには、マーケターがより顧客理解を深めなければなりません。顧客の行動を観察し、購買体験を磨き上げることも必要です。つまり、現場を理解しなければならないため、個人的には「マーケターもプロンプトを書けるようになろう」という風潮には違和感を覚えています。

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ブランドが蓄積した“らしさ”をAIは言語化できるのか

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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