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【ハイブリッド開催】ECzine Day 2025 Winter

2025年2月4日(火)13:00~18:45

失敗したから語れるECのこと

コンセプトの良しあしは評価できる?新規事業を経験してわかった伸びないECの共通点

 競合他社も行っているから。そんな理由でEC運営をしていませんか。トイザらスグループをはじめ、3社で大規模EC・オムニチャンネルの事業責任者を経験したネクトラス株式会社 代表取締役 中島郁氏による新連載「失敗したから語れるECのこと」。第1回は、EC事業を立ち上げる際の心得を解説します。

 私の専門領域は「新事業を立ち上げ成長させる、継続的に運営できるようにする」ことです。その中でも、小規模から大規模なものまで何度も関わったのが、EC事業でした。

 成果も出してきた一方で、いくつもの失敗を経験し、痛い目にあってきました。多くの失敗事例も目にしています。それらは、新たにEC事業を立ち上げようとしている皆さんの役に立つはずです。そこで第1回は、EC事業を立ち上げるまでの考え方、心得、構想/コンセプトの作り方を解説します。

「EC事業が伸びない」の理由は構想/コンセプトの検討不足

 企業に伺った際、経営層から「EC事業を始めたけれど売上が伸びない。うちのECサイトをどう思うか」と質問を受けることがあります。その際、私は「きれいでよくできたECサイトですね。しかし、なぜEC事業を始めたのですか。コンセプトはなんですか」と質問を返します。すると、「同業他社が行っているから」「EC市場が拡大しているから」「早く基幹店と競争できる規模にしたい」という答えが返ってきます。

 これは、コンセプトなのでしょうか。

 「なぜEC事業が伸びないのか」に対する普遍的な答えはありません。あっても、マクロなトレンドか手法です。構想/コンセプトは、企業によって異なります。各社の提供価値や置かれている環境、成長フェーズが異なるからです。

 先ほどの会話の続きで、私が「基幹店のコンセプトを教えてください」と尋ねると、多くの企業はしっかりと説明してくれます。つまり、実店舗のことは考えている一方で、EC事業に必要な要素は十分に検討できていないのです。

 この典型的な例が、筆者が過去に在籍していた大手小売店です。筆者が入社したとき、同社がEC事業を開始して既に15年以上が経過していました。それにもかかわらず、取り扱っているのは、ほとんどがお中元やお歳暮。ECサイトも、同社を想起できないような名称でした。

 危機感を持ち「何とかしよう」と機運が高まっていましたが、社内の会議では、実店舗とは異なり空中戦のような議論が続いていました。それらをまとめ、変えていくのが私の最初の仕事でした。

 私は、構想を「『対象顧客』への『提供価値』を、どのような『方法(タッチポイント)』で届けるか。その結果、顧客にどのような『体験』をしてほしいか」という意味で使っています。ここが明確でないと、商品やサービス、機能、ターゲットが曖昧になります。

 こうした構想を端的にまとめたものが、コンセプトです。ビジネスのベースとなる考え方であり、活動の旗印でもあります。

コンセプト
クリックすると拡大します

 新規事業は不確定なタスクが多く、無理にでも目途を付け、仮説を設定して進めなければなりません。判断基準、もしくは目的となるコンセプトがなければ、取捨選択ができず、ストレスが溜まります。新しくできた実店舗やブランドも、コンセプトがなければ消費者はなんとなく行かなくなるでしょう。オンライン上でも、同じことが起きる可能性があります。いい加減な検討で始めた取り組みを、消費者は見透かすからです。

 EC事業に限らず、構想/コンセプトを練る上で最低限押さえておくべきポイントが次の点です。

  • ありきたりの枠やフレームワーク、先行事例に当てはめようとしない
  • アイデアはまず内部で手を動かしながら出し尽くす
  • 市場調査はアイデア/仮説を検証するために行う
  • 「発散」させてから「収束」させる

 では、これらのポイントを押さえながらアイデアを形にする方法を、具体的に見ていきましょう。

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この記事の著者

ネクトラス株式会社 代表取締役 中島 郁(ナカシマ カオル)

新規事業立上げ、急成長事業マネジメントのプロフェッショナル。ベンチャー、外資、老舗、それぞれで事業立上げ、急成長事業の責任者を歴任。関与分野は、小売、EC、インターネット、メディア、アウトソーシングを含むサービス業等。トイザらスではマーケティング部門立上げ、EC専業法人設立。ジュピターショップチャン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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