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国内外のブランドがあふれる日本の化粧品市場
数年前から、日本の化粧品市場で大きな存在感を示すようになった韓国コスメ。それに続き、中国コスメも急速に注目を集めています。まずは、それぞれの日本市場での売り方を比較してみましょう。
韓国コスメの強みは韓流ブームの波に乗った訴求
K-POPや韓流ドラマが人気を得るなど、日本市場における韓国コスメの浸透の背景には、韓流ブームがあります。この流れをうまく活用している点が、韓国コスメの特徴の一つでしょう。
たとえば、2022年に日本で販売を開始した日韓共同開発のコスメブランド「Wonjungyo」を知っていますか。同ブランドは、日本人も所属するK-POPアイドルグループ「TWICE」のメンバーの専属メイクアップアーティスト、ウォン・ジョンヨ氏が監修していることで話題を呼びました。韓流ブームをうまく活用した販売戦略で、多くのファンから支持を集めています。
- 発売前から実施されていた戦略的な情報公開
- 日本のYouTuberとのコラボレーション
- SNSを駆使した積極的な情報発信
- 一貫したブランドコンセプトの訴求
- 戦略的な販売チャネルの選択
- ECサイトにおける販促強化
Wonjungyoは、発売前から人気アイドルをブランドミューズに起用していました。また、日本で活躍する著名なタレントやYouTuberともコラボレーションし、同ブランドの商品を使用したメイクを動画で紹介。インフルエンサーと積極的に協業しています。SNSでブランドコンセプトを一貫して訴求し、「涙袋メイクといえばWonjungyo」といったイメージを生み出しました。
この事例からわかるように、韓国コスメはエンターテインメントとの連動と、細やかな顧客接点の創出により、日本市場で確固たる地位を築いたといえます。
中華っぽさを反映した商品デザインとSNS活用でファンが増加中の中国コスメ
一方、中国コスメはどうでしょうか。今回は「中国メイクでナチュラルな美しさへ」をコンセプトに、アジア人女性の肌に合ったコスメを販売している「TIMAGE彩棠(以下、TIMAGE)」の事例で解説します。
中国美学における「余白」の美意識を取り入れ、シンプルかつ効果的なメイクを提案している同ブランド。中国の伝統文化や花・自然をイメージした商品デザインなど、いたるところに“中華っぽさ”が表れています。
TIMAGEの強みはSNS戦略です。特に中国では、抖音などのプラットフォームを通じてライブコマースを積極的に行っています。中国の大規模ECセール「618(6月18日)商戦」「ダブルイレブン(独身の日)」の時期にも、ライブコマースに参加。章子怡(チャン・ツィイー)氏など、中国で数々の人気女優のメイクを手掛けるメイクアップアーティストであり、TIMAGEのブランドプロデューサーを務める唐毅(トウ・キ)氏が、自ら新商品を紹介することもあります。
日本においても、TIMAGEの販売戦略は変わらず動画、特にショート動画を活用したインフルエンサーマーケティングです。商品の使い方など、“HOW TO”をベースにした情報発信に惹かれる消費者が多いようです。
加えて、商品の梱包では、外装や緩衝材の一部にコーポレートカラーを反映するなど、こだわりが見られます。一目で本物かどうかわかるため、模倣品対策としても効果的です。
こうしたブランド価値と、昨今の中華ドラマブームをはじめ中国の文化的なソフトパワーが相まって、若年層を中心に日本でも少しずつファンが増えています。
中国コスメの台頭は、日本の消費者が中国商品にもつイメージの変化を示唆しています。「Made in China」への抵抗感が薄れ、品質への信頼が高まっているのでしょう。つまり、コスメも含めて、日本のブランドは従来の中国商品へのイメージにとらわれず、コンセプトや品質面で差別化しなければならないのです。