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アリババグループのバーチャル試着 従来と何が違う?
EC業界に革命をもたらす新技術が登場しました。アリババグループが開発し2023年12月に発表した「Outfit Anyone」です。Outfit Anyoneでは、自分と洋服の画像をアップロードすることで、オンライン上でバーチャル試着ができます。アップロードする画像はアニメのキャラクターや衣装、動物、果物でもかまいません。エンタメ性が高い点も、従来のバーチャル試着とは異なるといえます。
私は、同ツールがバーチャル試着の概念を一新すると考えています。消費者とブランドの双方にメリットをもたらすだけでなく、ファッション業界全体のデジタル化を加速させる可能性を秘めているからです。
Outfit Anyoneがもつバーチャル試着機能の裏には、最先端のAI技術があります。それを駆使することで、ユーザーの体型や動きに合わせて服をシミュレートし、よりリアルな試着イメージを提供できるのです。
Outfit Anyoneが本格的に商用利用されるようになると、消費者とブランドの双方がメリットを得られます。消費者にとっては、当然ながらサイズや着心地の不安を大幅に軽減できる点が最大の強みでしょう。
一方、ブランド側のメリットとして期待できるのが、返品率の低下です。消費者が事前に自分の体型で服を確認できるため、サイズミスの発生を減らせると予測できます。加えて、在庫管理の効率化においてもメリットがあります。消費者の購買傾向をより正確に予測し、適切な在庫量の維持が可能になるからです。
これまでも、各社がバーチャル試着ツールやサービスを発表してきました。それらとOutfit Anyoneの大きな違いは、あらかじめ用意された商品やモデルの画像ではなく、自分の画像で着用したい商品の試着ができる点です。バーチャル試着用に細かい仕様を限定した画像でなくても試せます。また、洋服の画像も、既にECサイトなどで掲載されているデータで対応可能です。
スマートフォンを使いこなすユーザーは、気になる洋服があれば、その場でフォルダから画像を選んで試せるため、利便性が高いといえます。裏側では、AIの活用によりユーザーの行動データを蓄積し、趣味嗜好などを分析する仕組みでしょう。
私は、Outfit Anyoneが、アリババグループをはじめとしたECプラットフォームに実装される可能性が高いと予想しています。これにより、バーチャル試着による顧客体験の向上はもちろん、ブランド側のデータ分析の幅が拡がるはずです。