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Product Studioの機能は「Googleの迷い」ではない
2024年5月21日(米国時間)に開催された「Google Marketing Live 2024(以下、GML2024)」。今回の定点観測は、イベントで発表された内容をキャッチアップしつつ、これまでのアップデートとのつながりを見ていきたい。岡田氏はまず、Googleが2023年に発表し、今回のGML2024でも触れている「バーチャル試着」に注目した。
「以前に『AR Beauty サービス』と呼ばれていたものが発展し、今回発表されていました。無料リスティングやショッピング広告にARアセットを組み込むことで、主に上半身に着用するトップスを中心に、ユーザーがバーチャル試着が体験できるようになります。
すでに試験的な利用でもクリック率の大幅な上昇が確認できているようで、今後本格的に導入されていくでしょう。Google Merchant Center経由で商品データと広告が連携し、生成 AIによってその場にいなくても試着ができるようになる。購入前に試せない不安の払拭に一役買うサービスだといえます」
なお、現時点では米国内で販売されている靴と日用品のみに限られているが、Googleは検索内への3D画像導入にも積極的だ。近年はIKEAがアプリ内にARを使った「バーチャル家具配置」機能を提供するなど、家具の細部まで眺めたり、置き場所をイメージしたりといった「吟味する行動」がオンライン上でもしやすくなったが、Googleは以前の定点観測でも紹介したように、振り返れば2019年6月に発表した広告クリエイティブフォーマット「Swirl」からトライアルを重ねている。
「Googleは、『静止画像より3D画像のほうが、買い物客がエンゲージする確率が50%近く高いことがわかっています』と発表しています。注目したいのは、3D画像アセットがない場合も、高解像度かつ異なる角度からの2D画像を5枚以上Google Merchant CenterもしくはGoogle Manufacturer Centerにアップロードすれば、自動的にGoogle検索に表示できる商品の360°画像を作ってくれるところです」
こうした技術を無料で使えるのは、検索エンジンや広告プラットフォームとしてこれまで多くのデータを扱ってきたGoogleだからこそといえるだろう。そんなGoogleが生成AIの旋風による変化とどう対峙し、共存していくかも気にしたいところだ。
「Googleは、これまで『メインとなる商品画像は白抜きもしくは透明で』かつ『装飾は最低限もしくは一切含まないように』と要件を定めていましたが、『Product Studio』では背景を加えた商品画像が生成できる仕様になっています。
一見すると整合性がないと思われるかもしれませんが、追加画像での利用を推奨することで限定的に規制を緩和したと考えるのが適切でしょう。変化の激しい時代である以上、迅速かつ柔軟に新たな取り組みをしたいところですが、今やGoogleはステークホルダーが多すぎて、一気に変えると統制が取れないため、『使える場所を増やす』というアプローチで、最も生成AIのアウトプットと相性の良い出力先を探っているのでしょう。Product Studioは間もなく日本でも利用可能になると言われており、今後の展開は日本のEC事業者にとっても要注目です」