メール開封率の向上やブランディング効果も
BIMIの導入によるメリットは、多岐にわたる。まずは、エンドユーザーに安心感を届けられる点だ。加えて、メール開封率の改善にも効果的といえる。上村氏は、「BIMIの導入によって、メール開封率が10%以上向上した海外事例もある」と強調した。また、企業ロゴの表示によるブランディング効果、認知獲得、問い合わせ対応の負担軽減も期待できるという。
「BIMIの導入後、フィッシングメールに関する問い合わせが削減された企業もあります。自社が配信するメールの正当性を受信者に証明できるのは、大きなメリットです」
さらに、実施しているセキュリティ対策の可視化は、各企業への信頼につながる。
「DMARCへの対応は重要ですが、受信者側の立場からは見えづらい仕組みです。わかりやすく企業ロゴを表示し、正規メールだと視覚的に伝えることで、受信者に安心を届けられるでしょう。結果的に、受信者がメールを開封した後に記載されたリンクをクリックし、遷移先で安全に買い物をするという流れが生まれます」
一方、BIMIによる企業ロゴの表示には、要件が大きく二つある。一つ目が「DMARCへの準拠」だ。DMARCのポリシーを「quarantine(隔離)」あるいは「reject(拒否)」に設定する必要がある。
二つ目の要件は、「VMC(Verified Mark Certificate/認証マーク証明書)の取得となっている。これは、デジサート・ジャパンなどの公的に信頼された認証局による登記簿などの確認や、企業ロゴの商標登録を経て発行されるものだ。
ここで上村氏は、人事労務系のクラウドサービスを提供する株式会社SmartHRの事例を挙げた。同社は、なりすましメールの排除を目的に、いち早くDMARCとBIMIを導入。DMARCの設定によって、ドメインの不正使用やなりすましを防いだ上でBIMIに対応し、企業の信頼性と好感度の向上に成功した。
上村氏は、最後に本セッションのポイントを改めて説明するとともに、メール配信の仕組みの見直しを呼びかけた。
「フィッシングメールや不正送金の被害が急増し、消費者の不安も大きくなっています。その不安を取り除くために、DMARC対応は必須です。しかし、それだけではすべての被害を防げません。受信者目線で正規メールをわかりやすく区別できるBIMIなら、安心感を与えるだけでなく、メール開封率やクリック率の向上、自社ECサイトへのアクセス増加という副次的効果も得られます。より確実な対策として、DMARCとBIMIの両方を導入するのがおすすめです」