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「X」となったTwitter 次なる向き合い方を考えよう
2023年7月24日、Twitterの名称がXへと正式に変更され、世を騒がせた。イーロン・マスク氏による買収から2023年10月でちょうど1年たつが、藤田氏は「ステークホルダーが戸惑うほど変化し、まさに『激動の1年』といえるのではないか」と語る。
Twitter時代のデータになるが、ドイツでデータプラットフォームを提供するStatista社の独自調査によると、日本は国別ユーザー数が世界2位、人口に占めるユーザーの割合は47%と高い水準を誇っている。
多くの人が愛着を持つプラットフォームなだけに、一般消費者層まで含めてXの動向には高い関心が寄せられ、名称やロゴ変更時には様々な立場から声が上げられた。中にはこれを機にプラットフォームから離れる宣言を行い、様々な退避先を挙げた者も。混乱の中、タイミングを見計らったかのように2023年7月6日にテキスト共有アプリ「Threads」をリリースしたのが、Metaだ。
「『Threads』は5日間で1億ダウンロードを突破し、リリース直後はその勢いが注目されました。しかし、7月後半から既にDAU(Daily Active Users)数の低下が指摘され、人々の習慣を変える難しさに直面しているといえます。私たちは『代替できるもの』を探すよりも、『新しくなったXとどう向き合うか』を考えるべきなのかもしれません」
スーパーアプリ化にユーザーはついていけるか?
変化を受け入れる上では、まず相手が何を考えているか注視する必要がある。イーロン氏のXアカウントを見ると、その構想が浮かび上がるような発言が度々見られる。
「2023年8月31日に同氏は、電話番号なしでも活用できる音声通話、ビデオ通話の機能実装を近々行うとポストしています。また、8月上旬には広告収益分配プログラムに登録するひろゆき氏などのユーザーが、収益入金の旨を報告しています」
Video & audio calls coming to X:
— Elon Musk (@elonmusk) August 31, 2023
- Works on iOS, Android, Mac & PC
- No phone number needed
- X is the effective global address book
That set of factors is unique.
こうした動きの背景にあるのは、スーパーアプリ化だ。わかりやすい例を挙げれば、中国で既に浸透する「WeChat」のようなものだろう。ユーザーからの課金と広告収益だけに頼らず、トランザクションフィーも得ることで事業の立て直しを図るのか。人間が生活する上で必要とする、あらゆるコミュニケーションを一元化できるようにしていくのか。これまでGAFAですら自社でなし得なかった、「自社プラットフォーム内で決済サービスまで提供する」という構想をイーロン氏がどう実現するつもりなのかは、要注目といえる。
「イーロン氏はアクティブユーザー数の多い日本を高く評価していますが、スーパーアプリ化に至っては容易な道のりとはいえません。コミュニケーション領域においてはLINEが、決済領域においてはPayPayという強力なプレーヤーが存在します。また、これらのサービス提供に関わるLINEヤフーは2023年10月に合併し、両社がこれまで築き上げてきたサービスをどう連携させていくのかも気になるところです。
なんでもできるスーパーアプリは確かに便利ですが、1台のスマートフォンの中に1つあれば十分です。機能が複雑化すると、プラットフォームは使いこなせるかどうかという意味で『人を選ぶ』ようになってしまいます。ただつぶやくだけの場でなくなった際に、Xがユーザーにどう受け入れられるのかは注視していかなくてはなりません」