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顧客体験を左右するパーソナライズ。これには、企業全体で取り組む必要があります。オンライン上のパーソナライズは、データによる顧客理解の促進や大量のコンテンツの細かい出し分けが求められます。パーソナライズ自体が大規模化していることを踏まえ、前回は、戦略的にコンテンツを配信する「コンテンツサプライチェーン」の重要性をお伝えしました。
eコマースでは、「レコメンドを強化する」などの機能にフォーカスしがちです。しかし、膨大なコンテンツをどう効率的に制作し、eコマースの各種機能に連動すれば良いのかが重要になってきているのです。
今回は、大規模なパーソナライズやコンテンツサプライチェーンの構築に向けた、先進企業の取り組みを紹介します。
グローバル展開でもブランドサイトの運営拠点は1つ
パーソナライズの大規模化の前に、コンテンツの大規模化に悩む企業は少なくありません。特にグローバル展開している企業ならば、同じコンテンツでも国ごとに仕様を調整したり、エリアによって手間のかかる更新作業をしたりと、運用負荷が年々増加しているケースが散見されます。
高級ジュエリーを販売しているミキモトも、その中の1社でした。同社は、日本に加え台湾、フランス、イギリス、アメリカなど9つの国向けにブランドサイトを運営しています。さらに日本、イギリス、アメリカのブランドサイトにはEC機能が搭載されています。これだけ多言語・多地域にまたがると運営拠点も分散され、ブランド感の統一に苦心しそうですが、実はブランドサイトの運営は本社で一括して行われているのです。
同社は、多言語対応かつマルチサイト・マルチストア機能を持つECプラットフォームを導入。デザイン性をエリア全体で統一し、「MIKIMOTO」の一貫したブランドイメージを確立しました。ウェブサイトのソースコードやCSSはエリア共通なので、本社側で言語を変えるだけで各エリアのサイト更新も可能です。
もう1つ、国内企業の事例を挙げましょう。カシオ計算機は、人気ブランド「G-SHOCK」のカスタマイズサービス「MY G-SHOCK」を展開しています。約190万通りの組み合わせから、顧客がオリジナルのG-SHOCKを作れます。
G-SHOCKオフィシャルストア上の「MY G-SHOCKとは?」というページにある「さっそくカスタムしてみる」ボタンを押すと、G-SHOCKの真っ白な3Dモデルが表示されます。同じ画面の右横にあるパーツのカラーなどを選択すると、瞬時にこの3Dモデルに反映される仕組みです。顧客が選んだ好みのイメージを、オンライン上で視覚的に確認できるのです。