米国ではBtoBにもBtoCと同様の顧客体験が求められる
前回は大規模なパーソナライズとサプライチェーンマネジメントの先進事例として、EC事業者に限らず、様々な事業者の取り組みを紹介しました。それらは、どれも一般消費者向けのビジネスの事例です。つまりBtoCです。
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eコマースやウェブサイトのUI/UX、パーソナライズなどの進化は、これまでBtoC分野で多く展開されてきました。BtoCのウェブサイトは、不特定多数のユーザーが閲覧・利用します。それに比べて、ターゲットが限定されているBtoBのウェブサイトは、デザイン性やUI/UXにこだわって制作している企業がやや少ない印象があります。
もちろんBtoBでも、デザイン会社や広告代理店、建築・設計などデザインと事業が関わっている企業では、ウェブサイトのUI/UXに力を入れているでしょう。ただ、顧客体験という視点で見ると、必ずしも「かっこいいデザイン=良い顧客体験」とはいえません。
無駄にアニメーションが流れたり、情報がどこにあるのかわかりにくかったり。見た目のスタイリッシュさだけを追い求めた結果、使い勝手が悪くなっているウェブサイトもあります。
ECサイトに至っては、UI/UXにすら配慮されていないものもあります。型番検索をしないと該当製品の情報に辿り着けない、製品カタログをそのまま掲載しているなど、顧客体験に寄り添うBtoBのECサイトは決して多くありません。
しかし、そんな状況にも変化が起きつつあります。実は米国では、BtoBでも、BtoCと同様の顧客体験の提供が求められるようになっているのです。大規模なパーソナライズを展開したり、戦略的なコンテンツサプライチェーンの整備に乗り出したりする企業が増えています。
BtoBの商談結果は事前の情報収集が7割?
米国企業がBtoBでもパーソナライズやコンテンツサプライチェーンを意識するようになった背景には、コロナ禍でデジタルマーケティングが加速したこともあるでしょう。元々国土が広い米国では、対面営業よりもテレマーケティングが盛んでした。そこにコロナ禍が重なり、デジタルシフトが一層進んだのです。
アドビとEconsultancyは、2022年にBtoB企業の役員814人へインタビュー調査を実施しました。その結果によると、BtoB企業の76%が「近年、購買パターンが変化している」と実感しています。そのうち71%は、「デジタルチャネルを初めて利用する既存顧客が急増している」と回答しています。また、65%が「デジタルチャネルを通じて新規顧客を獲得している」ことがわかりました。
これまでもBtoBは、「商談に入る前に行われるウェブ上の情報収集によって顧客の意思が7割決まる」といわれてきました。ウェブサイトの役割はますます重要度が上がり、もはやメインの営業チャネルとなっています。
BtoBでも、これからはアクセスしたユーザーのIPアドレスから業種や企業規模を絞り込み、適した情報を自動で提示したり、メール登録を促して有益な情報を送ったりするなど、パーソナライズされた顧客体験を提供しなければなりません。