縦割り組織がコンテンツの制作と展開を阻んでいる
第1回の記事では、パーソナライズなどEC体験向上の鍵としてコンテンツの重要性をお伝えしました。
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求められるパーソナライズは、ECサイトを訪問した顧客の属性に加え、顧客の商品に対する理解度、ニーズ、予算など、様々な要件に応じて変化します。そのため、できるだけコンテンツのバリエーションを多くして対応しなければなりません。
内容はもちろん、ウェブページ、動画・音声、3D画像など多彩なアセットが必要です。昨今はパーソナライズとしてカバーすべき範囲が拡大傾向にあるので、戦略的かつ迅速なコンテンツの供給・展開が求められます。
ここでいう「コンテンツの供給・展開」とは、コンテンツの企画・制作から、関係部署のチェックを経て、ECサイトやアプリ、動画チャネルなどに公開するまでのプロセスを指します。
多くのEC事業者は、コンテンツ制作は外部の制作会社、アプリや動画チャネルの対応はマーケティング部などのように、業務や役割を割り振っているかもしれません。しかし、戦略的かつ迅速にコンテンツを供給・展開するのであれば、企画・制作から公開までの一連のプロセスについて「本当に効率的に業務が進んでいるか」を押さえておく必要があります。このコンテンツの供給・展開のプロセスを「コンテンツサプライチェーン」と呼びます。
では、どうすれば戦略的かつ迅速なコンテンツサプライチェーンが実現できるのか。ここでは、逆に「なぜ戦略的かつ迅速なコンテンツサプライチェーンが実現できないのか」という点から考えてみましょう。
先ほど、コンテンツサプライチェーンでは「部署担当によって業務や役割を割り振っている」EC事業者が多いと述べました。実は、この縦割りの体制が、コンテンツサプライチェーンを複雑でコストのかかるものにしているのです。
制作チームであれば、クリエイティブのアセットごとにデザインチームが存在し、それぞれでクリエイターを抱え、デザインコンセプトから成果物の制作を進めています。一方では、自社コーポレートサイトの運用チームがウェブサイトの改修やクリエイティブの差し替えを行います。さらにもう一方では、マーケティングチームが独自にキャンペーンを展開して告知用のクリエイティブを制作しています。
それぞれの施策について経営層や事業責任者の確認・許可をもらいますが、そのやり取りもメール、紙文書、クラウドでの共有とバラバラです。
こうなると、迅速な意思決定やコミュニケーションはもちろん、コンテンツも管理しきれません。その結果、コンテンツサプライチェーン全体の工数もコストもかかるというわけです。